ギザストーン(恐竜の胃石)
資料名 | ギザストーン(恐竜の胃石) Gastroliths(Gizzard stone) |
産 地 | アメリカ ワイオミング州 |
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資料番号 | Fo1102(1・2・3) Fo1103(4・5) |
時 代 | 中生代(2億5100万から6550万年前) |
寸 法 | 1: 75.8 × 44.2 ミリ 2: 61.5 × 34.5 ミリ 3: 80.3 × 61.0 ミリ 4: 63.5 × 56.9 ミリ 5: 66.3 × 56.5 ミリ |
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解 説 | ヒトの歯は、前歯=噛み切る,犬歯=引き裂く,臼歯=すり潰すと役割ごとに形が異なっています。しかし、恐竜の歯は同形歯といって、同じような形の歯ばかりが並んでいます。しかも噛み合わせも良くなく、獲物を噛んでつかまえたり、肉を引きちぎることぐらいしかできません。食物はほとんど丸飲みでした。恐竜の歯は、ヒトの手のはたらきをしていたにすぎないのです。しかし、そんな食べ方をしていても消化不良は起こさなかったようです。それは糞を調べればわかります。「えっ!どうやって恐竜のウンチを調べるの?」と思われるかもしれませんが、この「スタッフのおすすめ 第23回」でご紹介したように恐竜のウンチは化石となって残っているのです。 丸飲みでもちゃんと消化できたヒミツが今回ご紹介する胃石(いせき)です。恐竜は胃の中にこのような石をたくさん持っていて、ミキサーのように食べ物を細かくすりつぶしていたのです。さらに植物を食べる恐竜では、植物セルロースを分解する微生物(バクテリア)も体内に持っていたので、オルニトミムスのように口がくちばしのようになっていて歯がないタイプの恐竜でもちゃんと消化ができました。 本資料は、アメリカのワイオミング州で発見されたもので、胃の中ですりあわされていたため摩耗して角が取れ丸くなっています。また、表面は非常に滑らかです。残念ながら元の持ち主の恐竜の種類は特定できませんが、すべての恐竜が胃石を持っていたわけではありません。肉は植物よりも消化しやすいため、一般に肉食恐竜には胃石は必要なかったようです。竜脚類とプシッタコサウルス※1、オルニトミムス※2、コンプソグナトゥス※3などから発見されています。また、恐竜ではありませんが、首長竜の化石のおなかからも胃石が見つかっています。これは海中に潜ったり、浮かび上がったりするときに体のバランスを調整するはたらきをしていたのではないかと考えられています。胃石は糞の化石同様、生痕化石(せいこんかせき)に分類されます。 ヒトの胆石(たんせき)は良く知られていますが、同様に胃にも石ができることがあります。ヒトの場合、胆石も胃石もどちらも体内で化学成分が固まってできたものですが、恐竜の胃石はそうではなく、落ちている石を自分で飲み込んだものです。1頭の恐竜の胃の中から200個以上もの石が見つかった例もあります。胃石は胃の中でゴロゴロすりあわされているうちに角が取れて擦り減っていきます。すると恐竜は古い石をはき出し、かわりの石を飲み込んで新しいものに交換していたようです。このようにしてはき出された石の山が多数発見されています。 恐竜の子孫である鳥類は、砂のうという消化器官(焼き鳥屋さんでお馴染みの砂肝(すなぎも))の中にやはり胃石を持っています。現生のは虫類では、ワニだけが胃石を持っておりヘビやカメにはありません。(H) ※1 プシッタコサウルス・・・・オウムのようなトカゲ 鳥盤類 周飾頭類 鳥盤類はすべて植物食。 トリケラトプスなど一般に鳥盤類はほおをもつので、口の中で食べ物をかむことができた (から胃石はもたなかった)。 ※2 オルニトミムス・・・・・・・・ダチョウ恐竜 竜盤類 獣脚類 雑食性(昆虫や植物) ※3 コンプソグナトゥス・・・・小さな肉食恐竜 約1メートル 竜盤類 獣脚類 |
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