パレオパラドキシア(Paleoparadoxia)
資料名 | (1)右脛骨 学名 Paleoparadoxia sp (2)全身骨格標本(レプリカ) 学名 Paleoparadoxia tabatai |
登録番号 | (1) Fo1813 (2) Fo1492 |
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分類 | 束柱目 デスモスチルス科 |
産地 | (1) 津市白山町北家城 雲出川河床 一志層群 (2) 岡山県津山市 原標本:津山市教育委員会蔵 |
時代 | 新生代第三紀中新世 (およそ1,850万から1,400万年前) |
寸法 | (1) 218mm×108mm×61mm (2) 2,000mm×900mm×700mm |
解説 | 今回ご紹介する資料は、津市白山町(旧一志郡白山町)北家城で発見された謎のほ乳類「パレオパラドキシア」の右脛骨(けいこつ 後ろ足のすねの骨)の一部とされる化石と岡山県津山市で発見された化石をもとに復元された全身骨格標本(レプリカ)です。 1,850万年から1,400万年前ごろの西日本には、古瀬戸内海と呼ばれる大きな海が、現在の長野県から広島県のあたりまで広がっていました。三重県内でもこの海に堆積した一志層群(いちしそうぐん)という地層が、津市から松阪市にかけて分布しています。一志層群からは「パレオパラドキシア」のほかにも「クジラ」や「イルカ」「サメの歯」「貝」類などの海生生物(かいせいせいぶつ)の化石が多産します。そのころは、地球全体がいまより暖かく、日本周辺の地域は熱帯から亜熱帯の環境でした。パレオパラドキシアは、このような暖かい海の岸辺に住む全長2メートルほどの水陸両生の四足歩行のほ乳類でした。胴体はカバのように太く、四肢は短く頑丈で、大きな手足を持っていました。エサは、海藻や海草を食べていたと考えられています。 「パレオパラドキシア」という名前は、呪文のようですが、「パレオ(=古代の)」と「パラドックス(=矛盾)」ということばを組み合わせて名付けられました。それは、まだ全身骨格が発見されていなかったころ、世界中の学者が、この海生のほ乳類を「クジラ」や「ジュゴン」のような海獣の仲間だと考えていたのです。ところが、世界で初めての全身骨格が日本で発見された(昭和25(1950)年 岐阜県土岐(とき)市)とき、陸を歩くりっぱな4本の脚がそろっていたからです。 「束柱目(そくちゅうもく) デスモスチルス科」というグループ名は、その臼歯(奥歯)の形に由来します。臼歯がのり巻きのような円柱を何本も束ねたようなかたちをしているので、ラテン語の「デスモ(=束ねる)」と「スチルス(=束ねる)」をあわせて、「デスモスチルス(=束柱目)」と名付けられました。このグループの仲間は、6つの「属」が知られていて、化石が見つかっているのは、いずれも日本、サハリン、カムチャッカ、オレゴン、カリフォルニアを含む北太平洋沿岸域の漸新世(ぜんしんせい)から中新世(ちゅうしんせい)の浅海(せんかい)性の地層のみです。すべての「属」が完全に絶滅しており、子孫はいません。比較的、近縁なのは、「ゾウ」か「ジュゴン」ではないかと考えられていますが、生態については、まだまだ謎の多い動物です。(H) |
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![]() (2) 全身骨格標本(レプリカ) |