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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > ガンヅメ ( 雁爪 )

ガンヅメ ( 雁爪 )

資料名 ガンヅメ(雁爪) 資料番号 1056
時代 昭和時代 寸法 20cm×20cm
解説

ガンヅメは、農業の機械化が始まる以前の昭和30年代まで使われていた除草用の農具です。稲作作業の中でも除草作業は重労働のひとつで、中でも8月の除草作業は、農家を悩ますほどのものでした。しかし、近年の除草剤の研究や工夫で、こうした除草作業を田園でほとんど見ることがなくなりました。
写真の「ガンヅメ」は、松阪地域の稲作で、手持ちの除草具として使われていたもので、昭和30年代まで使用されていたという伝承があります。また、農機具の入らない小さな耕地など面積の関係で、近年まで使われていたようです。ガンヅメが県下の農家に導入された時期についての記録は残っていないようです。
こうした形態のガンヅメは、松阪以北の伊勢平野では、名前がわからないまま放置されたり、資料館などに収蔵されたりして、比較的多く残っている農具です。ところが、松阪以南や志摩地域では、あまり目にすることがないことから、名称が判明しないことや早くに農具として使用がなくなったことも考えられます。尾鷲地域では、水田耕作が少ないことなどからもほとんど目にしない道具のようです。
ガンヅメは、江戸時代に久留米藩領の筑後国御井郡国分村の笠九朗兵衛(りゅう くろべい)がガン(雁)の爪をヒントに宝永(ほうえい)4(1707)年に考案したといわれ、農具や炭鉱の採掘に関係して使われていた道具と記録されています。
また、文献などで調べてみると文政(ぶんせい)5(1822)年に刊行された大蔵永常(おおくら ながつね)の『農具便利論』には「此雁爪は田の一番草、二番草をとるに専ら用いる也(中略)畿内、西国では用いざるところなし」とあり、ガンヅメを使う地域が近畿地方や中国地方、四国地方に広がっていたことがわかります。そして、使い・福ノついて「稲株のあいだに打ち込み、前かえせば草は下になる也、又稲の根を切巾へ延宜しといえり、夫よりして根際をまた懇になるなり、至てはかどるのみならず労をはぶき其の草くさりて肥やしともなるなり」と記されています。ガンヅメが一般的に普及したのは、明治に入ってからとも言われている。
使われなくなったガンヅメは、わたしたちの歴史を伝えるものですが、無言のなかに人々の感情や苦悩、喜びを密かに伝える貴重な文化遺産です。物の大切さや道具の素晴らしさを教えてくれる物です。(FW)

ガンヅメ(雁爪)
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