球状花崗岩(きゅうじょうかこうがん)
資料名 | 球状花崗岩 実物 | 登録番号 | Ro 0859 |
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岩石名 | トーナル岩(注1参照) | 産 地 | 津市美杉町下多気 |
分 類 | 火成岩 | ||
解 説 | 今回、紹介する資料は、2002年9月に三重県で初めて産出が確認された球状花崗岩です。一志郡美杉村(現津市美杉町)内の八手俣川で、転石として発見されました。球状花崗岩は、球状岩の一種です。球状岩とは、球状組織が肉眼で確認できる大きさに発達した岩石のことで、花崗岩類などにまれにみられます。その形態の特異さから国や県の天然記念物に指定されているものも少なくありません。古くは、1923年に宮城県白石市の球状閃緑岩、1931年に愛知県瀬戸市猿投山の球状花崗岩(通称「菊石」)が国の天然記念物に指定され、県の天然記念物としては、1937年の茨城県新治郡八郷町(現石岡市)産の球状花崗岩(通称「小判石」)が知られています。今までに、球状岩の産出報告は、全国約30箇所ほどしかありません。美杉町産の球状花崗岩は、2005年に津市の天然記念物に指定されました。
この球状花崗岩が産出した場所は、美杉トーナル岩体の西端部にあたります。美杉トーナル岩体は、三重県中央部に広がる新期領家花崗岩類に属す岩体で、雲出川沿いの津市美杉町八知付近から松阪市南部にかけての東西20km,南北7kmで分布しています。この球状花崗岩をふくむ花崗岩は、一般的な美杉トーナル岩とは異なり、細粒なアプライト(注2参照)質です。 この球状花崗岩の球状部は、最大7.2cmで卵形を呈し、有色鉱物で構成される同心円構造が発達しています。(写真2)。このような同心円構造は、最大3回繰り返し発達し、球状部分の中心部は粗粒な角閃石を含むことが多いという特徴がみられます。 さて、どうして、このようなおもしろい卵形の形ができたのでしょうか。それは、アプライト質の岩石が一部溶けた状態で岩脈をつくり、さらにその中の固体状態の部分が転がりながら球状部を形づくりながら、大きく成長してできたと考えられます。みなさんが、普段見慣れている花崗岩ですが、その組織をていねいに観察すると面白い発見ができるかもしれません。 今回、紹介した津市美杉町産の球状花崗岩は、球状岩の成因などを考察する上において貴重な資料といえます。 *注1 トーナル岩:長石の一種であるアルカリ長石が少ない花崗閃緑岩をいう。 |
![]() 球状花崗岩(Ro0859) 高さ36cm (いくつもの球状組織部がみえる。) |
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![]() 球状組織の切断面(長径5cm) |