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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > イシモチソウ

イシモチソウ(Drosera peltata  Smith var. niponica (Masam.) Ohwi)


イシモチソウ(鈴鹿市)
和 名  イシモチソウ
学 名  Drosera peltata  Smith var.   
 niponica
(Masam.) Ohwi
資料番号  MPMP 24990  MPMP 24991
分 類 種子植物門
双子葉植物綱
離弁花亜綱 
モウセンゴケ科
モウセンゴケ属
採集日  1949年(24990)  
 
1993年(24991)
採集地  三重県上野市(現・伊賀市)
資料形態  さく葉標本

葉は三日月形で、頂部に花をつける
解 説


 イシモチソウは湿地に生育する多年草で、本州の関東地方以西から九州、琉球に分布し、海外では朝鮮半島から中国にかけてみられます。地下に小さいジャガイモのような芋1(塊茎)があり、春先に塊茎からのびた芽は10~30cmの高さに成長します。そして、5~6月ごろに茎の先端等に直径10mm程度の白い花を多数咲かせます。イシモチソウは食虫植物で三日月形をした葉の表面には多くの腺毛があり、先端からだされた粘液によって、虫を捕らえて消化吸収します。粘液は粘着力が強く、葉が地面の小石に触れるとくっつけて持ち上げてしまうことから「石持ち草」と名づけられたとされています。

イシモチソウは春に塊茎より発芽し、5~6月に成長と開花ののち7月には地上部が枯れ、8月以降には早くも地中の塊茎で休眠します。夏以降に休眠に入る生活パターンは、北半球と季節が逆転している南半球に由来するイシモチソウの先祖の生活パターンが残っているためと考えられています。イシモチソウが南半球に由来する植物である根拠としては、イシモチソウのように地下に塊茎を持つ「球根1(塊茎)ドロセラ」(ドロセラはモウセンゴケ属の学名)とよばれるモウセンゴケの仲間が、現在も南半球のオーストラリアに多くの種類が分布していることや、イシモチソウの先祖と思われる食虫植物最古の花粉化石がインド東部のアッサム州で発見されていることなどがあげられています。これらの事実から、イシモチソウは古くゴンドワナ植物群2に先祖をもち、白亜期にインド亜大陸の北への移動に乗り、南半球から北半球に分布を広げたものと考えられています。

上記のような雄大な物語を秘めたイシモチソウですが、三重県では伊賀・北勢・中勢などで生育地がみられるものの、場所は点在し、個体数も限られています。そのため『三重県レッドデーターブック2005』では絶滅の危機が増大している種として「絶滅危惧Ⅱ類」に分類されています。生育地は、やや湿った酸性土壌で貧栄養の草地が多く、このような場所は宅地や工場などの開発対象となりやすいことから、生育地自体の消滅のほか、開発による周辺環境の変化によって乾燥化や植生の変化が起こることで絶滅の危険にさらされています。(M)
 
 1 芋や球根という表現は通称で、実際には 
 地下茎に栄養たくわえる塊茎(ジャガイモなど)、
 根に栄養をたくわえる塊根(サツマイモなど)、地
 中につくられた葉に栄養をたくわえる鱗茎(ユリ
 など)等に分類されます。


 2 ゴンドワナ植物群はゴンドワナ要素の一つ
 とされ、南半球の大陸とインドなどが一体となっ
 ていたゴンドワナ大陸に由来する植物を指しま
 す。ちなみに、ゴンドワナ大陸から分離したイン
 ド亜大陸は地球上のプレート移動によって北上
 し、やがてユーラシア大陸にぶつかったことでヒ
 マラヤ山脈が形成されたと考えられています。


地中にある塊茎
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