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開館30周年記念企画
KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン

2012年8月28日(火)〜10月14日(日)

 「型紙」とは、江戸小紋や長板中形、型友禅などの染色工程で用いられ、和紙を柿渋で貼り合せた地紙に、特製の彫刻刀で精緻な文様を彫りぬく日本の伝統工芸です。今日、型紙、即ち伊勢型紙とされるようになった理由は、江戸時代に三重県鈴鹿市白子・寺家地方が御三家の紀州藩領となり、型紙販売商人たちが、藩への莫大な冥加金の献上と引き換えに、行商上の数々の特権を得たことにさかのぼります。また、伊勢型紙が得意とした精緻な文様は、凛とした気品を漂わせ、武士の礼服である裃にふさわしく、やがて歌舞伎、能の世界へと取り入れられ、富裕町人層さらには庶民へと技の妙と文様の粋がもてはやされました。すなわち、型紙は、日本の「型染め」に欠かせぬものとして発展し、和紙による型紙と米を原料とした防染糊という、他国に例を見ない、日本の風土に根差した染色文化を形成するのに大きく貢献したといえるでしょう。

 この日本の着物文化の「影の立役者」ともいうべき大きな役割を担っていた型紙が、19世紀後半、江戸から明治へと時代が移り変わるちょうどそのころ、何千何万という単位でヨーロッパを中心とした海外へもたらされた事実はほとんど知られていません。それは一つの国の特異な現象ではなく、全ヨーロッパ的運動ともいえる、広範囲にわたるものでした。型紙のもつ繊細かつ斬新なデザインは、現地の画家や工芸家、デザイナーたちに大きな影響を与え、各地で浮世絵に次ぐ、「もうひとつのジャポニスム」と呼ぶべき熱狂の渦が巻き起こりました。

 三重県立美術館は、開館30周年記念の展覧会として、三重県を代表する工芸品である「型紙」をキーワードに選びました。企画展示室では、「KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン」展と題して、「型紙/KATAGAMI」と欧米の美術との関係を探ります。国内外の70か所にものぼる所蔵先から集めた作品約400点によって構成された展示室は、まさに圧巻と言えるでしょう。

 また、同時に県民ギャラリーでは、「極小の宇宙 手わざの粋―伊勢型紙の歴史と展開」展を開催し、江戸時代から現代に至る、型紙のさまざまなあり方をたどります。江戸小紋や長板中形など、代表的な型染めの世界に加え、印伝や摺絵といった、染色以外の型紙の様々な利用法も紹介することにより、伊勢型紙の多様性が認識され、そこに秘められた可能性の「再発見」へとつながるに違いありません。

 これら二つの展覧会は、日本の伝統工芸である「型紙」を軸に、地域や時代、文化や歴史を越えて、さらには絵画、工芸、デザインなどジャンルも軽々と横断する、全く新しい試みになるでしょう。

 型紙からKATAGAMIへ、そしてKATAGAMIから型紙へ。時代や歴史、文化や国境までも越えた型紙/KATAGAMIの綾なす世界をぜひご堪能ください。

(学芸員 生田ゆき 友の会だより no.90 2012.8)

 

友の会だより文集抄

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