昨年4月から8月にかけて、柳原義達記念館展示室Bでは柳原と親交のあった建畠覚造の作品を特集展示しました。戦後具象彫刻の旗手とされる柳原に対して、建畠は日本における抽象彫刻の開拓者の一人です。ざらついた表面と生動感のあるヴォリュームの変化によって人体や鴉、鳩に生気を通わせる柳原と、丁寧に処理された表面が超然として、時にユーモアを漂わせる建畠の作品は、ずいぶん対照的と映ったことでしょう。 ただふりかえってみれば、ちょうど洋画と日本画が対をなして成立したのと同じように、具象という概念もまた、抽象が成立したからこそその対として浮上したものにほかなりますまい。抽象が登場する以前には、そもそも具象と呼ぶ必要はありませんでした。これはことばの問題にとどまりません。抽象以後の具象はそれまでと同じではありえず、柳原における表面やヴォリュームの処理は、そうした問題に対する回答の一つなのでしょう。 柳原義達記念館展示室Bでは今後も、柳原の作品に別方向から光を当ててくれるような特集展示を継続していくことが計画されています。7月からは都市の構造をパーツの集積に置き換えるミケル・ナバッロの《歩哨都市》が、10月末から12月初旬にかけては、やはり建築や都市の初源的なイメージを想起させる石井厚生の作品が展示される予定です。(Ik)
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