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第2室 ゴヤの《闘牛技》

第2室に展示するのは、ゴヤの第3銅版画集《闘牛技》(1815-16年、第4版=1905年出版)です。

 

三重本が100部刷られた第4版であることは、‘Van Gelder Zonen’あるいは球の上に立つクピドの図という透かし、また数点の画面に認められるスクラッチによって確認できます。第4版という以上初版に比べると、画面によっては版の状態が劣化したものも含まれていることは否めません。

 

ただ第2版以降では第4版が最良の刷りとされ、加えて第3版からは、初版33点に含まれていない7点が追加されました。これらはゴヤ自身が初版から外したものなのですが、しかしだからこそ、興味深い比較例をなしているのです。

 

たとえば追加作no.Cと初版以来のno.25を比べてみましょう。同じ素描に基づきながら、前者での左の群像が削られ、背景を単純化、調子も明るくなることで後者においては、時間の流れを止めてしまうような強い光の中でのきわめて緊迫した情景が描きだされることとなりました。

 

同様の事態は、初版の掉尾を飾るno.33《マドリード闘牛場におけるペペ・イーリョの不運な死》と追加作での同主題による2点の別構図(nos.E, F)にも認められます。追加作はいずれも連作制作の早い時期に手がけられたものと考えられており、各銅板の裏面に初版に含められことになる画面が彫版されました。それゆえ両者を比較することで、ゴヤの制作過程の一局面をうかがいみることができるのです。

 

なお連作冒頭の14点は、過去の闘牛の歴史を描いたもので、知人の父モラティンが著した闘牛史(1777)にならったものとされています。

 

No.15以降は主にゴヤと同時代の闘牛士たちや事件が描かれます。ゴヤ以前にはアントニオ・カルニセロの版画集《闘牛技》(1791)が膾炙しており、ゴヤも参照したとのことですが、ゴヤの画面はカルニセロのように闘牛の諸相を平明に図解するわけではなく、明と暗、動と静、生と死がさまざまな形で交錯するさまを描くことで、闘牛というものが宿す圧縮された時間を引きだしえているように思われます。

 

《闘牛技》はゴヤの他の版画集のように、時として幻視にまでいたる諷刺を語りはしません。ただ冷厳な視線とないまぜになった闘牛への愛が、作品を単なる風俗描写で終わらせず、とりわけ、闘牛士や背景の観衆ら人間たち以上に、牛たちに深い存在感を宿らせることとなったのでしょう。

 

(Ik)

 

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