ラモーン・デ・ソト(第1室)
第1室に入るとすぐ、ラモーン・デ・ソト Ramón de Soto(1942年、バレンシア生まれ)の作品が展示されています。ソトは、空間の構成に主眼をおいた彫刻をさまざまな形で展開してきましたが、近年は特に、小さな作品を配置することで、空間全体の表情を感じとらせるインスタレーションを展開しています。4年ほど前には、京都の法然院というお寺の、大広間と庭園でインスタレーションしたこともあります。
彼の作品は、ナバッロのざわざわとしたうごめきを感じさせるインスタレーションに比べると、ずっと静かな感触を与えます。ここでも、物の形をとった作品がそれだけで問題なのではなく、それらの周囲にひろがる空間こそが問題なのでしょう。しかも、その空間は決して何もないからっぽのものにとどまってはいません。からっぽであるがゆえに、むしろ、何ともしれない何かの、はっきりと名指すことのできない雰囲気が感じとれはしないでしょうか。今回の展示は全体で『記憶の風景』と題され、個々の作品には『沈黙の建築』といったタイトルがつけられています。<記憶>や<沈黙>という、形をなさない何かが主題なのです。
実際、小さな作品はよく見ると、階段や門、橋などの形をしています。これらはいずれも、少なくとも機能としては、それ自体が目的なのではなく、どこか別の場所へ導くための道具でしかありません。とすると、これらの階段や門、橋は、いったどこへ導くというのでしょうか? また、ある作品の一部として、日本の字を書くための細筆が混じっています。これは何を暗示しようとするのでしょう?
シンポジウムより、1997.10.26
ラモーン・デ・ソト
「- 私の仕事は、沈黙、黙想、そして生の意味についての省察です。それゆえエロス(愛の神)とタナトス(死の神)が、私の作品の内に現前しています。愛と死、存在と非存在は、その日々の関係の内で、生を定義し、それに意味を与えるのです。
- それゆえ、地球上のさまざまな民族の諸文化それぞれの宗教芸術は、その機能として、人間存在が、彼自身の個々の実存の意味を見つけることを助けるものだと、私は考えています」。
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