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【展覧会予告】

ヒューマニズムの系譜−日本の具象彫刻10人展 1930s−1950s

(8/1(土)−9/6(日))

毛利伊知郎〈学芸員〉

1930年9月の満州事変に始まり1945年8月に集結した日中戦争から太平洋戦争に至るいわゆる15年戦争は、政治や経済、社会のみならず、あらゆる面でわが国に大きな影響を与えました。無論、美術の世界も例外ではありませんでした。

戦後日本の美術界では、欧米の最新の造形表現の影響を受けて、それまでにない新しい表現が試みられたりしました。しかし、そうした戦後美術の新しい動向というものも、戦前から戦中期にかけて画家や彫刻家たちが得た様々な体験と全く無関係ではありません。

その間、戦争の長期化と国民に対する全体主義的抑圧が進む中で、作家たちは思想や表現の自由の弾圧、兵役とそれに続く抑留、制作の中断など、表現者として自身の存在の本質と関わる苛酷な経験を余儀なくされました。

こうした厳しい経験の中で、作家たちはそれぞれに思索を重ねて、各自の表現世界を深化させていったということができます。

本展に出品される10名の彫刻家たち(高田博厚、菊池一雄、本郷新、山内壮夫、柳原義達、佐藤忠良、舟越保武、青田芳夫、西常雄、桜井祐一)は、1900年代初頭から1910年代前半に生まれ、いわゆる戦中世代に属しています。

彼らは、青年時代に高村光太郎らの著作を通じてロダンに傾倒し、またプールデル、マイヨール、デスピオらの影響を受けて、ロダン以来の生命主義的な造形を尊重する立場に立ちます。

また、日本美術院に属して木彫も制作した桜井祐一を除くと、いずれも1928年(昭和3)に設置された国画会彫刻部に作品を出品し、また1939年(昭和14)に創設された新制作派協会彫刻部め主要メンバーとして活動し、自然主義的リアリズムを旨とした官展の彫刻とは対立した作家たちです。

この展覧会は、こうした1930年代から50年代にかけて、ヒューマニズムに裏打ちされて、人間の内実をリアルに表現しようとした在野の彫刻家たちの作品を通じて、わが国の具象彫刻の展開の一面を紹介しようとするものです。

なお、本展は昨年5月から8月までフランス南西部の町モン・ド・マルサン市のデスピオーヴレリック美術館において開催された“Le Japon Sculpture moderne 1935−1955”(日本の近代彫刻1935−1955)の帰国展でもあります。


菊池一雄「青年」1948年
佐藤忠良「群馬の人」1952年
柳原義達「バルザックのモデルたりし男」1957年

友の会だより no.48, 1998.7.23

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