資料名 |
学名
Papilio protenor Cramer
和名
クロアゲハ |
資料番号 |
イ 異常型(メス)
チョウ20(箱)
ロ 一般的なオス個体
チョウ77(箱)
ハ 一般的なメス個体
チョウ77(箱) |
分 類 |
昆虫網(Insecta)
チョウ目(Lepidoptera) |
寸 法 |
イ 開長:113ミリ
ロ 開長:100ミリ
ハ 開長:115ミリ |
採集日 |
イ 昭和33(1958)年8月10日
ロ 昭和63(1988)年8月21日
ハ 昭和63(1988)年9月 4日 |
採集地 |
イ 伊賀市白樫(旧上野市白樫)
ロ 尾鷲市水地
ハ 尾鷲市水地 |
解 説 |
クロアゲハは、国内では本州、四国、九州、南西諸島に分布し、海外ではチベット地方、インド北部、ミャンマー北部、ラオス、中国南部、朝鮮半島南部、台湾などに分布しています。
三重県全域で普通に見られるクロアゲハは、幼虫の時には、サンショウやカラタチなどのミカン類の葉を食草にしています。成虫は、三重県では年に3回の発生し、4月下旬より姿を見せます。樹間のややうす暗いところに好んで生息し、クサギ、ネムノキ、ユリ類などの花に吸蜜したり、湿地で吸水する姿を見ることができます。
今回は、クロアゲハの異常型の標本(写真1・写真2)をご紹介します。この個体は、採集時の記録によると、伊賀市白樫で百日草の花を吸蜜しているところを採集されたものです。
一般的にクロアゲハのオスには、後翅表の前縁に黄白色の横帯(写真3)があり、メスは後翅外縁の赤紋が発達(写真4・写真5)することから雌雄を区別していますが、中でも八重山諸島のメス個体は、特に後翅外縁の赤紋列が良く発達し、後翅下端の尾状突起が短い地域的特徴があるとされています。
今回ご紹介するクロアゲハの異常型のメスは、尾状突起が長く全体の形質は本州の個体の特徴を持っていますが、後翅外縁の赤紋が八重山諸島のメス個体以上に幅広く発達した個体(写真1・写真2)で、翅の表側と裏側も同じように赤紋が広がっています。これほどまでに、赤紋の発達がみられるのは、大変稀なことです。おそらく突然変異で現れた個体だと思われます。生きもの突然変異とは、親と異なる遺伝的形質が突然出現する現象をいいます。突然変異の中には次世代に遺伝するものあり、生きものの進化につながることもあります。今回ご紹介した突然変異の異常型個体は、種の多様性を考える上では貴重な資料といえます。
当時このチョウが飛んでいた姿は、クロアゲハと思えない新種のチョウに見えたのではないでしょうか。このように突然変異の個体があらわれることがありますから、注意深く観察すると新たな発見につながるかもしれません。(I)
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【写真1】 異常型(メス・表) |
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【写真2】 異常型(メス・裏) |
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【写真3】 オス・表 |
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【写真4】 オス・裏 |
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【写真5】 メス・裏 |