和 名 |
ヒガンバナ |

ヒガンバナ (さく葉標本) |
学 名 |
Lycoris radiata Herb |
分 類 |
種子植物門 単子葉植物綱
ヒガンバナ科 ヒガンバナ属
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資料形態 |
さく葉標本 |
資料番号
原資料産地
採集年
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(花)原色標本79
(鱗茎と葉)MPMP 27750
(花)三重県津市神戸
(鱗茎と葉)三重県伊賀市長田
(花)1997年10月7日
(鱗茎と葉)1972年12月14日
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解 説 |
秋の彼岸が近くなると田んぼのあぜなどに赤く燃え盛るようなヒガンバナが咲き始め、夏の暑さが過ぎ去る季節を感じます。
ヒガンバナは人里に近い田畑のあぜや川の堤防、さらには墓地周辺の草地などに群生します。これらの場所は人が管理し、夏に草刈りなどがおこなわれています。ヒガンバナは草が刈り取られた後の背の丈の低い草地から花茎を伸ばし、その先端に赤々と目立つ花を咲かせます。分類的にはヒガンバナ科に属し、同じ科にはハマオモト(ハマユウ)やスイセンがあります。
ヒガンバナは地下に黒い外皮につつまれた鱗茎(一般的には球根と呼ばれる)があり、その名のとおり、秋の彼岸ごろになると鱗茎から高さ30~50cmの花茎を伸ばして先端に花を咲かせます。花茎の先端に咲く赤い花は、よく見ると朱赤色の5~7個の花が花茎を中心に輪をかくように並んでいることがわかります。個々の花からはおしべが大きく飛び出ているため、いっそう花が大きく艶やかに感じられます。時々できる果実に種子ができることは稀で、鱗茎が増えることで増殖します。
葉は花が終わり花茎が枯れたあとの晩秋に現れます。花と葉がそれぞれ時期を変えて現れるため、これがヒガンバナの葉だとは意識されにくいようです。深緑色で光沢がある線形で、長さ30~50cm、幅は7mm程度です。葉は冬の間に青く茂り、他の草が枯れている冬の草地で十分に光合成をおこない、鱗茎に栄養をたくわえた後、春には枯れてしまいます。そして、夏の間は土の中で眠り、夏の暑さが和らいだ秋に再び花を咲かせます。あらためて考えると、一般的な草花で見られる、春に芽を出し秋に枯れるといったライフサイクルとは大きく異なっており、他の植物との競争を避けるという意味では、面白い特徴をもっているといえます。
ヒガンバナは北海道から沖縄までの広い範囲で見られますが、本来の自生ではなく、中国から渡来したものが広がったと理解されています。ただし、有史以前に日本に渡来していたと考えられることから、江戸時代末期以降に渡来した一般的な帰化植物とは異なり、日本に自生する植物と同様に扱われています。
ヒガンバナは人里に近い場所に見られる印象深い花であることから、古くから人々に親しまれています。その証拠として50を越える地方名があり、細分化すると1000を越える別名があるという報告もあります。例えば、仏教用語に由来するマンジュシャゲ(曼珠沙華)、植物体に含まれる有毒成分(アルカロイド)のため食べると舌がしびれることからシタマガリ、墓地周辺に多いためサンマイバナ(ハカバナ)、花茎の先端に赤々と咲く花を火にたとえたカエンバナなどです。
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博物館前の群落(平成21年撮影) |

(中央)つぼみ、(奥)開花初期、(左下)開花晩期(平成21年撮影) |

三重県立博物館の看板とともに(平成21年撮影)

ヒガンバナさく葉標本(鱗茎と葉)
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上から見ると輪生する花と長く伸びたおしべがわかる(平成21年撮影)

花の後に現れるヒガンバナの葉
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