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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > マツバウンラン

マツバウンラン(Linaria Canadensis (L.) Dumont

和 名  マツバウンラン マツバウンラン (樹脂封入標本)
マツバウンラン (樹脂封入標本)
学 名  Linaria Canadensis (L.) Dumont
分  類

種子植物門 双子葉植物綱

合弁花亜綱 ゴマノハグサ科

資料形態  樹脂封入標本
資料番号  MPMT 0162
解 説

  サクラの花も終わり、フジの花が咲き始める頃、線路沿いのバラスト(砂利)の上などに紫色の花がいっせいに咲き、あたかも淡い紫色の霞がかかったような風景をつくることがあります。
 この植物はマツバウンランで、線路際など石の多い荒地や芝生などの草地に生育する越年草です。マツバウンランの名前は、海岸に生えるランに似た花をつける植物として名がついたウンラン(海蘭)の仲間であることと、線形の葉がマツの葉に似ていることから名づけられたようです。
 花期以外は地表面に茎を広げ、線形の葉を多数つけます(葉の形は多様で細くない個体もあり)。さらに走出枝と呼ばれる茎を伸ばし、その先端部に新しい株をつくって増殖します。春から初夏にかけて高さ30~50cmほどの茎を地表から立ち上げて、枝分かれしたそれぞれの先端に淡い紫色の花を多数咲かせます。花の形は仮面状の唇形で面白い形をしています。
 マツバウンランは古くから日本に自生していた植物ではなく、海外から日本へやってきた帰化植物です。原産地は北アメリカで、1941年に京都市伏見区向島で採集された記録が最初とされています。1980年ごろには関東以西から瀬戸内海沿岸にかけて帰化している程度でしたが、拡大傾向にあり、現在は東北南部・北陸地方から九州にかけて報告されています。
 帰化植物とは、人間の活動によって、外国から日本に持ち込まれ、日本で野生化した植物と定義されています(1976,長田武正)。特に、島国であり外国と明確に分布区分ができる日本では、渡来した時期を目安に区分されることがあり、江戸末期以後の海外との盛んな交流によって渡来した「新帰化植物」と、有史以前に渡来した「史前帰化植物」(ヒガンバナ、ナズナなど)、その間に帰化した「旧帰化植物」などに区分されることがあります。これらの区分は研究者の中でいくつもの考え方がありますが、特定の植物がいつ日本に渡来したかを立証することは困難であるため、帰化植物と呼ぶ場合は、江戸末期から現在までに帰化した植物をさすことが一般的です。
 帰化植物が日本にやってきた過程はさまざまなルートがあります。①園芸や作物・薬用として日本に意図的に持ち込まれ栽培されていたもの、②道路の法面緑化のために利用される種子や飼料穀物に混じっていたもの、③繊維の原料として持ち込まれた羊の毛などに種子がついていたものなど、それぞれの理由で日本に持ち込まれたと考えられます。マツバウンランの帰化ルートはよくわかっていませんが、三重県は、かつて北勢地域に多くの繊維工場があり、オーストラリアなどから大量の羊毛を輸入していました。そのため、三重県では多くの帰化植物が確認されています。三重県の帰化植物研究は、鈴鹿市立神戸中学校校長などを勤められた太田久次さんによって詳しく調べられ、『三重県帰化植物誌』などにまとめられて報告されています。三重県立博物館では、太田さんから寄贈を受けた多くの帰化植物の標本を収蔵しています。
 帰化植物は日本国内で繁殖し、定着するものは外来生物として問題視されています。しかし、このような種類は、帰化植物全体から見ると決して多くはなく、一時的に国内で確認された後、やがて見ることができなくなる種類が多いようです。それだけに、新しく確認された種はしっかりと記録をしておく必要があります。

マツバウンラン 花のアップ(鈴鹿市)
マツバウンラン 花のアップ(鈴鹿市)
群生するマツバウンラン(鈴鹿市)
線路内のバラスト上に生えるマツバウンラン(津市)

 群生するマツバウンラン(鈴鹿市)

群生するマツバウンラン(鈴鹿市)

 
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