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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > ドジョウ

ドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus

和 名 ドジョウ
ホルマリン溶液 液浸標本(松阪市産)
学 名 Misgurnus anguillicaudatus
分  類 ドジョウ科ドジョウ属
資料形態 ホルマリン溶液液浸標本
資料番号 魚類395
原資料産地 松阪市川井町鐘紡裏の水路
採 集 年 1979年
解 説

 ドジョウはドジョウ科に属する純淡水魚類の1種です.体型は細長く,体長が大きくて約10 cmで,ひげが5対あり体をくねらせるようにして泳ぎます.ほぼ日本全国に分布し,中国大陸や朝鮮半島,台湾島にもいます.ドジョウは雑食性で,主に水深の浅い湿地である農業用水路や水田に生息しており,人間の生活や生業に近い場所にいて容易に観察や採集でき,また美味であることから,人にとっておなじみの生き物となっています.

 春になると水田は水稲栽培のため通水され,浅い湿地のようになります.ドジョウは6-7月になると産卵のため通年水のある河川や農業用水路から,水をたたえた水田に遡上し,夜間に産卵します.産卵はオスがメスに巻きついて抱卵放精が行われます.オスはメスに巻きつくために,胸びれは伸び,胸びれ第2鰭条基部上片が後方に厚くなって骨質盤と,背びれの前方と基底付近にこぶ状突起があり,これらの形質の有無でオスメスが比較的容易に判別できます.

  卵は1-3日で全長約3.4-4.0 mmでふ化し,ふ化した仔魚は10日で全長20 mm,20-40日で約34 mmと急成長します.水田内で成長し稚魚になった個体は,水田に取水後20-40日に主に水田の水尻から農業用水路に移動して生育します.冬季にドジョウは,農業用水路での通年水のある水域にいますが,水の無くなった水域や水田の土中に潜って数匹が塊状になって越冬しているのが観察される場合もあります.越冬後,生まれてから1年が経過すると成熟して産卵することが出来るようになります.この様に,ドジョウは水田などの一時的にできあがる水位が浅い湿地に適応した淡水魚と言えそうです.

  現在,ほとんどの農業用水路は,ほ場整備により水路構造が土からコンクリートへと護岸化されています.その結果,人にとっておなじみだったドジョウは,潜れる土壌や浅い湿地が水路内で無くなり,また水路と水田の接合部分の傾斜がきつくなって水田への遡上ができなくなったことから,産卵がうまく行われず,急速にその姿を消しています.今でもドジョウがたくさん生息している場所にはきっと人の関わり方が昔から変わらない岸が土のままの農業用水路が残っていることでしょう.そのような景観は,人と自然の関わりの歴史と文化を今に残す自然・文化的景観として大変価値があり,ドジョウはその生き証人なのでしょう.これから春になりますが,冬眠からさめて泳ぎだしているドジョウを探しに水田や農業用水路を散歩してみてはいかがでしょうか? (KJ)

 


ドジョウの標本


ドジョウのすむ土の護岸の農業用水路(松阪市)

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