デンジソウ(Marsilea quadrifolia L.)
![]() デンジソウ |
和 名 | デンジソウ |
||
---|---|---|---|---|
学 名 | Marsilea quadrifolia L. | |||
資料番号 | MPMP 14023 | |||
分 類 | シダ植物 デンジソウ科 | |||
採集年 | 1914年 | |||
採集地 | 三重県津市 | |||
資料形態 | さく葉標本 | |||
![]() デンジソウ(さく様標本) |
解 説 |
写真をみて多くの方は「四つ葉のクローバー(シロツメクサ)がたくさんある」と幸せな気持ちになるかもしれません。しかし、写真の植物は四つ葉のクローバーではなく、「デンジソウ」というシダ植物の一種なのです。 デンジソウは冬に葉が枯れる夏緑性で、水田や沼などの流れのない水域でみられる水生のシダ植物です。名前を漢字で記すと「田字草」となり、四つ葉のクローバーを思わせる小葉4枚をつけた様子が、「田」の字にみえることからこの名前が生まれました。観賞用の水草として栽培されることもあり、「ウォータークローバー」とも呼ばれています。ちなみに、学名の種小名であるquadrifoliaは「四つ葉の」という意味です。 分布範囲はヨーロッパ・インド北部から東アジアで、国内では北海道(きわめてまれ)・本州・四国・九州と奄美大島の低地に生育します。かつては、暖かい地域を中心に普通に見られ、水田の雑草とされていました。しかし、除草剤の使用や水田の耕作方法の変化、さらには水田の減少などにより、近年はめずらしい存在となっています。県内でも各所に分布していましたが、これまでに絶滅した地域が多く、現在は数箇所で生育が確認されているに過ぎません。そのため、『三重県レッドデータブック2005』では、近い将来に絶滅が心配される種として、絶滅危惧ⅠB類(EN)に分類されています。 デンジソウは、水辺の泥の中で細く長い茎を横に這うように伸ばし、ここからほぼ一定の間隔で葉を出します。葉柄は10~15cm程度で、この先端に4枚の小葉を広げます。葉は水深がある場所では水面に浮かび、水が少ないか無い場所では葉柄によって空中に持ち上げられます。この姿を見るかぎりは一般的なシダ植物の容姿とはかけ離れているため、シダ植物と認識されないことが多いようです。 デンジソウはシダ植物なので花は咲かず、胞子で繁殖します。胞子をつくる器官を「胞子のう」といい、胞子のうがたくさん集まったものを胞子のう群(ソーラス)と呼びます。多くのシダ植物では、葉の裏面に黒~褐色の胞子のう群がつくられますので、みなさんも見られたことがあるのではないでしょうか。これに対して、デンジソウでは「胞子のう果」と呼ばれる硬い殻のある豆の様な器官の内部に胞子がつくられます。デンジソウの胞子のう果は、茎から出る葉柄の付け根からやや上につきますが、胞子のう果が形成されることは比較的めずらしいこととされています。 現在、県内でデンジソウみつけることは、四つ葉のクローバーをみつけることよりも稀で幸運なことかもしれません。しかし、農薬使用の減少など、水田の耕作方法が近年見直されてきていますから、ひょっとすると身近なところにデンジソウがみつかるかもしれません。実際、津市内において新しいデンジソウの生育地が確認されています。みなさんも暖かくなってきたら、近くの田んぼでデンジソウを探してみませんか。(M) |
||
![]() 「田」の字に見えるデンジゾウの葉 |
||||
![]() 水田に生育するデンジソウ |
![]() 横に伸びる茎から出る葉 |