ルーミスシジミ(Panchala ganesa loomisi(H.Pryer))
資料名 | ルーミスシジミ | 解 説 |
今回は、生息出来る環境が少なくなり絶滅の危機に瀕しているルーミスシジミを紹介します。 ルーミスシジミは、1877年アメリカの宣教師ヘンリー・ルーミスが現在の千葉県君津市鹿野山で最初に発見したもので、和名は発見者の名前に由来しています。 ルーミスシジミの成虫は、年に1回、6月から7月頃に発生し、成虫のまま越冬するとされていますが、成虫の発生回数については諸説があり、詳しい生態は未だ完全には解明されていません。成虫は、通常 樹上の高い場所で生活していますが、8月から9月の暑い日には、林床の下草にとまっていたり、沢沿いに降りて吸水していることもあります。 ルーミスシジミの翅は、暗褐色の表面中央に明るいスカイブルーの紋があり、その紋は、メス(写真1)の方が大きく、オス(写真2)は小さく黒っぽく見えます。裏面(写真3)は、灰白色から褐灰色の地色に、ウロコ状の斑紋があります。このためこのチョウが木の葉の裏側で翅を閉じてとまっていると、自然の背景にとけこみ、発見されにくくなります。 ルーミスシジミは、国外では台湾(山地)・中国西部・ヒマラヤ地方に、国内では千葉県の房総半島南部を北東限として紀伊半島・中国・四国・九州・隠岐・屋久島に、局地的に分布しています。県内では、これまでに伊勢市の神宮林・度会郡大紀町の滝原宮・紀伊山地南部の渓谷地域で生息が確認されています。 しかし、神宮林では伊勢湾台風が来襲した1959年、滝原宮では1969年を最後に、その姿を見ることが出来なくなり、現在は、紀伊半島南部地域でしか見られなくなってしまいました。 どうして、神宮林や滝原宮でルーミスシジミの姿を消してしまったのでしょうか? ルーミスシジミの生息地は、幼虫が食べるイチイガシなどのカシ類が生い茂る自然度の高い照葉樹林ですが、神宮林では伊勢湾台風の直撃を受けてイチイガシを含むカシ類の樹林に大きな被害が発生し、生息個体数に大きな影響があったと考えられています。また、滝原宮では、周囲の開発や開墾により境内の照葉樹林の孤立化が進んだことや、台風などによる自然災害の影響によって、次第に生息個体数が減少していったとされています。 このチョウの絶滅を防ぐには、自然豊かな照葉樹林の保全が重要です。 ルーミスシジミは、開発などによる生息に適した照葉樹林が全国的に減少したことによって絶滅のおそれがあり、『国のレッドデータブック』では絶滅危惧Ⅱ類に、また『三重県レッドデータブック2005』でも絶滅危惧Ⅱ類に位置づけられています。(I) |
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学 名 |
Panchala ganesa loomisi(H.Pryer) |
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分 類 |
昆虫網 チョウ目 シジミチョウ科 |
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資料番号 | 箱番 チョウ10 | ||
資料1 (オス) |
三重県伊勢市 伊勢神宮 内宮 1956年(昭和31年)8月26日 性別 オス 大きさ:開帳28mm |
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資料2 (メス) |
三重県伊勢市 伊勢神宮 内宮 |
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写真1 (メス・表) |
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写真2 (オス・表) |
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写真3 (裏) |
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