ミミカキグサ(Utricularia bifida L.)
![]() ミミカキグサ(伊賀市) |
和 名 | ミミカキグサ |
---|---|---|
学 名 | Utricularia bifida L. | |
資料番号 | MPMP26983 | |
分 類 | 種子植物門 双子葉植物綱 合弁花亜綱 タヌキモ科 タヌキモ属 |
|
採集日 | 1997年 | |
採集地 | 三重県上野市(現・伊賀市) | |
資料形態 | さく葉標本 および レプリカ | |
![]() ミミカキグサ さく葉標本 |
解 説 |
ミミカキグサの仲間は湿地に生育する食虫植物で、水がしみだす裸地やため池の縁部などにみられます。日本にはミミカキグサ、ホザキノミミカキグサ、ムラサキミミカキグサ、ヒメミミカキグサの4種のミミカキグサの仲間が分布しており、三重県はかつてそのすべての種類をみることができる数少ない地域のひとつでした。しかし、『三重県レッドデータブック2005』では、ヒメミミカキグサは県内での生育が確認できず絶滅にランクされ、ムラサキミミカキグサも限られた場所でしか見ることができない状況となっています。 グループを代表する名前を持つミミカキグサは多年草で、日本では本州から琉球かけて分布し、海外では中国やインドからオーストラリアまで広く分布しています。地表または地中を横にはう細い茎には、花をつける花軸や、葉とともにミジンコなどをとらえる袋状の「捕虫のう」が生じます。葉は線形で長さ7mm程度、花軸は高さ10cm前後で夏から秋にかけて黄色い花を数個つけます。花の後につくられる果実は、残存したガクに包まれて扁平になり、これが花軸とあわせて「耳掻き」のように見えることからこの名がつきました。「捕虫のう」は葉が変化した大きさ1mm程度の袋状の器官で、ミジンコなどを水とともに吸い込んで捕らえ、消化吸収を行います。 さて、ミミカキグサなどの食虫植物は緑色植物として光合成を行いますが、栄養分の少ない湿地などに生育するため、昆虫などを捕らえて消化吸収し、生育に必要な栄養分(リンや窒素)を補うという特殊な生態的特徴を持っています。食虫植物が虫を捕らえる方法としては、葉の表面の腺毛から粘液を出して捕らえる「粘着式」(モウセンゴケ、ムシトリスミレなど)、葉をすばやく閉じることではさんで捕らえる「閉じ込み式」(ハエトリソウ、ムジナモ)、水とともに袋に吸い込んで捕らえる「吸い込み式」(タヌキモ、ミミカキグサ)、消化液をたくわえた袋に落とす「落とし穴式」(ウツボカズラ、サラセニアなど)などがあります。これらの捕虫機能はいずれも葉が変化した捕虫葉によって行われます。虫を捕らえる植物としての認識は1780年代にはあったようですが、科学的な実験検証によって食虫植物が認知されたのは、進化論で有名なチャールズ・ダ-ウィン(英)と息子のフランシス・ダーウィンが1875年に著した「Insectivorous Plants」によってです。 なお、人間でも食べすぎが病気の原因となるように、やせた土地で不足しがちな栄養分を栄養分を補うために捕虫機能を発達させた食虫植物に、動物にエサを与えるように昆虫を与えるのは、逆に植物本体を弱らせてしまうことがあります。(M)
|
![]() ミミカキグサの葉(線形のもの:矢印)ヘラ型はホザキノミミカキグサ(別種)の葉 |
||
![]() ミミカキグサ(レプリカ) |