竹内栖鳳 《虎・獅子図》 1901年
竹内栖鳳(1864-1942)
《虎・獅子図》
1901(明治34)年
紙本墨画淡彩
虎や獅子は、桃山から江戸時代にかけて好まれた画題であった。虎と豹をペアで描いた作品も残っているが、これは、実際の虎をよく理解していない当時の絵師たちが、豹を虎の雌であると考えたためである。
幕末の京都に生まれ、明治、大正、昭和と京都画壇を導いた栖鳳も、虎や獅子を描いている。栖鳳ば、ヨーロッパで動物園を訪れており、本作はそのときの写生をもとに描かれた。余白を強調した大画面に静かに横たわる虎は、写実にもとづくリアリティーがあり、セピア色を基調とした色彩とともに西洋での学習の成果があらわれている。栖鳳は、伝統的な日本画を十二分に研究しつつ、新しい日本画を追求し、伝統と革新の混在する近代京都画壇を確立した画家であった。 (佐藤美貴 中日新聞 1998年2月13日)
虎や獅子は、室内を荘厳する屏風絵や襖絵の好画題として、桃山時代以降、多くの画家たちによって描かれてきた。
明治から昭和前期の日本画界に大きな足跡をのこした竹内栖鳳のこの作品は、向かって右隻に、静かに横たわる虎、左隻には、岩に前脚をかけて背を伸ばした雄ライオンの姿が、セピア調の色彩で金地の上に描かれている。栖鳳は、1900年から翌年にかけてヨーロッパを旅行し、帰国後、渡欧体験に基づく新作を次々に発表した。この「虎・獅子図」も、渡欧の成果の一つで、アントワープやロンドンの動物園で初めて見たライオンの写生をもとにした作品であり、発表当時大きな評判を取ったと伝えられる。
栖鳳は、京都で活躍したが、保守的な画境にとどまることなく、「猫斑」、「鯖」など革新的な作品を発表し続けた。(毛利伊知郎)125の作品・三重県立美術館所蔵品 1992年
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