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美術館 > コレクション > 所蔵品解説 > 曾我蕭白 《林和靖図》 1760年 解説

曾我蕭白 《林和靖図》 1760年

 曾我蕭白(1730-1781)

林和靖図

1760(宝暦10)年 

紙本墨画

各172×364cm 

曾我蕭白《林和靖図》 1760 左隻曾我蕭白《林和靖図》 1760 右隻 

 

 中国、上海から列車で四時間余りを走ると杭州の街に着く。杭州第一の景勝は西湖である。今から一千年ほど前、街の西に拡がるこの湖の一角、弧山に、林和靖という世俗をいとう文人が庵を編んだ。彼の風流三昧の生活は、後に中国や日本の文人たちに理想と仰がれ、絵の題材としても採り上げられるようになった。
 掲出の屏風は、曾我蕭白の描く林和靖である。林和靖は弧山に梅の木を植え、鶴を放して愛でたという。
 曾我蕭白は、江戸時代、十八世紀の中ごろから後半にかけて京都を中心に活躍した画師である。それにしても、この林和靖のうかない、いかにも退屈そうな表情はどうしたことだろう。これでは、悠々自適、風流という文人の常套的な理想をあざ笑うかのようだ。
 蕭白は、古典的な、使い古された題材をしばしばこのように彼独自の料理法で特異な作品に仕上げる。まるで常識化された伝統を意識的に排除しようとするような姿勢さえみせる。そして、描く人物には彼自身の個性的な人間像を投影する。近代的な自我意識が芽生える十八世紀の日本の画師の代表者のひとりといわれる所以である。(山口泰弘) サンケイ1988年5月29日

 

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