第6章 元永定正の大きな絵
元永定正が人並みはずれたエネルギーの持ち主であることを端的に示しているのが、横幅数メートルに及ぶ巨大な作品だ。元永の抽象絵画は比較的小形の作品から出発したが、1950年代後半以降大形化し、1960年代の具体美術展には200号大の大作が度々出品された。
1960年代後半以降、特にニューヨークから帰国した後は、横幅3メートル以上の作品、時にはキャンバス2枚からなる横幅5メートル以上の作品も描かれるようになった。青年時代から元永は、自家製の木枠で画面を自作することも珍しくなかったというから、規格外の大きな画面を用意することに大きな障害はなかった。
1970年代後半から80年代にかけて元永はしばしば各地の公共施設などに壁画を制作し、時には大画面に注射器などで描くパフォーマンスなどを行っている。
そうした体験が関係しているのか、1990年代以降、絵具流しと「かたち」の表現を併用した巨大作品が多数発表された。そこではより自由で軽快なかたちや線と、より変化に富む色彩の競演を見ることができよう。