ごあいさつ
三重県立美術館では、昭和57年(1982)の開館以来、三重県ゆかりの作家たちの作品収集を行うとともに、展覧会を通じてこれらの作家について紹介を行ってきましたが、このたび三重ゆかりの近代の洋画家たちに焦点を当てた「三重の近代洋画展」を開催いたします。
明治以降活躍した三重ゆかりの洋画家では、天保6年(1835)、松坂に生まれ、幕末から明治時代前半に地図制作の分野で活躍する傍ら、緻密な写実表現による水彩画「鴨の静物」を遺した岩橋教章の名が筆頭にあげられます。その後、明治13年(1880)に津中学校(現津高等学校)が開校すると、藤島武二、鹿子木孟郎、赤松麟作ら近代洋画史上重要な役割を果たすことになる画家たちが図画教師として赴任して後進の指導に当たり、同校からは榊原一廣や新井謹也のように美術の世界に進む者が出ました。
また、大正9年(1920)から津中学校で30数年にわたり教壇に立ち多くの人々から敬愛された林義明、昭和20年(1945)9月から三重師範学校(現三重大学教育学部)に赴任した足利義郎らは、三重県における洋画の普及や後進の育成に大きな役割を果たしました。その他にも、春陽会で活躍した中谷泰や佐藤昌胤、ダブルイメージの作品で独自の境地を開いた三輪勇之助ら個性にあふれる洋画家たちが輩出しています。
この展覧会では、三重県立美術館の所蔵品を中心に、こうした近代三重における洋画の展開を紹介いたします。最後に、展覧会開催に当たりご支援をいただきました関係各位にあつくお礼申し上げます。
1998年1月
三重県立美術館
(財)三重県立美術館協力会
財)岡三加藤文化振興財団