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ごあいさつ

私たちは子ども特有の可愛らしいしぐさ、言動を「子どもらしい」と愛情を持って表現します。けれども、フランスの歴史家フィリップ・フリエスが『〈子供〉の誕生』で指摘しているように、「子どもらしさ」が子どもの善き特徴として積極的に評価されはじめたのは近代以降のことでした。現代の私たちもまた、この価値観にもとづいて子どもの話をしているのです。

ところで、子どもとは大人にとって非常に近しい存在です。すべての大人はかつて子どもだったのです。一方で、子どもたちの行動が理解を超え、彼らの存在が遠く思えることもしばしばあります。大人にとっての子どもとは、内在しながらも、同時に他者でもあり得るという両義的な存在と言えるのではないてしようか。

「子どもらしさ」とその存在の両義性は、造形作家をさまざまな方向に導いています。子どもに対して他者である大人(親)として表現している場合、また、造形的な興味などから「子どもらしさ」に魅せられる場合もあるでしょう。さらに、近年では作家の抱えている問題意識が「子どもらしさ」と重ね合わされ、作家の思いを伝える最適なモチーフとなつている傾向も見られます。作家の個人的な動機によってその表現の可能性は千変万化、まさに、「とらえがたき」子どもたちなのです。

この展集会では、近代的子ども観が日本で受容されるようになった大正期の頃から現代までの作品を対象としています。さまざまな時代を経て、常に子どもが注目されるのは、やはり、彼らが私たちにとっての「未来のシンボル」であるからでしょう。子どもの姿には、人間の幸福願望が託されているのです。

最後に、この展集会を開催するにあたり、貴重な作品をご出品していただきました美術館、所蔵家の皆さま、ご協力いただきました作家の方々、その他関係各位に厚くお礼申し上げます。

1996年4月

三重県立美術館

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