ジョエル&ジャン・マルテル
Joel et Jean Martel
1896年、ナントー1966年
42 《胸を膨らませるハト》
Pigeon boulant
1925年
石膏に着彩
Platre patine
26×15.5×25.5cm
フロレンス・ランジェ・マルテル夫人
Madame Florence Langer Martel
43 《ライオン:ベルフォール郵便局の浅浮き彫りのためのマケット》
Lion Maquette d'un bas relief pour l'Hôtel des postes de Belfort
1929年
切り抜いた亜鉛
Planisculpture en relief de zinc decoupée
25×34×9.5cm
フロレンス・ランジェ・マルテル夫人
Madame Florence Langer Martel
44 《オンドリ》
Coq
1926年頃
c.1926
石膏に着彩
Platre patine
39×22×27cm
フロレンス・ランジェ・マルテル夫人
Madame Florence Langer Martel
ジャン&ジョエル・マルテル。双子の兄弟。父は二人に同じ服、同じおもちゃ、同じ教育を与えました。1906年に兄弟はパリのリセ(フランスの高校)に通います。最初は建築に関心を持ちますが、その後彫刻へ方向転換します。1912年に国立装飾芸術学校へ入学し、第二次世界大戦後墓碑彫刻で名を挙げました。自分たちの作風がとてもよく似ていることに気づいた兄弟は、芸術の世界に足を踏み入れた初期から共同製作を行い、作品に「J.J.Martel」と署名しました。彼らについてこのように語る人もいます。「4本の手を働かせ、二つの脳で考える。ジャン&ジョエル・マルテルについて語るとき、思わず単数形をつかってしまいそうになる」。(ポール・フィエラン)彼らは二人の利点を最大限に生かし、常に最新の技法と素材を探し求め、自分たちの作品に用いました。
マルテル兄弟が動物をモティーフとして採用したのは1919年でした。バレンシアの毛皮商人の注文で、便せんのレターヘッドに横向きの《白テン》をデザイン化しました。さらに同様の形態で彫刻も制作しました。見慣れたポーズで、あくまで自然な姿をしながらも、キュビスムやアール・デコといった当時の美術潮流の影響を受け、単純化されたボリュームと、なめらかな凹凸に彼らの特徴が現れています。
動物彫刻のためであっても彼らの線は迷いが無く必要最小限です。数学的な黄金分割の法則にのっとり、定規とコンパスを利用してまるで図面のようです。彼らの目標は合理的な造形が生み出す純粋さや簡潔さでした。
素材に対する冒険心にも注目すべきです。伝統的な彫刻の素材(大理石、ブロンズ)以外にも、彩色された磁器、セメント、亜鉛などで制作しました。同じ作品を異なる素材で複数制作し、色とマティエールのバリエーションを楽しみました。亜鉛は安価な上、ハサミやノコギリなどで加工しやすく、表面には魅惑的な光沢がゆらめくことからが、兄弟にとってお気に入りの素材でした。素材をヤスリでこすり、さらにつけ加えたりして、丸みを帯びたボリュームのある動物たちが生まれます。
確かに動物の表現はマルテル兄弟の創作において主要な対象ではなかったかもしれません。しかしながら、このことはあまり重要な問題ではありません。動物芸術家であれ、グラフィック・デザイナーであれ、装飾家であれ、肖像画家であれ、彼らはそれぞれの作品を自らの探求の一つの段階として等しく力を注ぎました。形象の分析と統合の間に絶妙のバランスを取り、、まさに二人三脚で作り上げた彼らの明晰で洗練された作品は、フランス近代美術において魅惑的な輝きを放っています。
(生田ゆき)
参考文献
Les sculpteurs et l'animal dans l'art du XXe siècle,Monnaie de Paris,1999,p67-69.
Joel et Jean Martel,Sculpteurs 1896-1966:Gallimard/Electa,1996.
Joel et Jean Martel,Sculpteurs 1896-1996: Hôtel du Department de la Vendée Avril/Aout,1996.