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美術館 > 刊行物 > 学芸室だより > 新聞連載 > 空洞化対策、幻の上越「中華街」 井上隆邦 2010

空洞化対策、幻の上越「中華街」

井上隆邦

空き店舗が増え、閑散とした中心市街地。解決策はあるのか。十年程前、日本海側の港町、新潟県・上越市で副市長を勤めていたころ、スタッフと良く議論したものだ。

一筋縄ではいかない空洞化問題。議論の過程で出て来たのは八方ふさがりの現状ばかり。最も深刻だったのは、中心市街地・商店街のオーナーの高齢化。話を聞けば、子ども達が都会に出て、後継者がいないという。自分の代で店をたたみたいとの本音ものぞかせた。肝心の後継者がいなければ、打つ手は難しい。議論が暗礁に乗り上げたところで出たアイデアが「中華街構想」だった。

上越市の対岸は日本海を挟んで人口13億の美食の国、中国。一方、日本国内に目を転じれば、日本海側には長崎を除けば中華街は一つもない。

であれば、若くて、腕も良い料理人を中国から呼び寄せ、空き店舗で美味しい中華料理を供すれば、全国各地から観光客が集まり、再び活気づくのではないか。腕に自慢の若い料理人を10組程度確保出来れば、構想はスタート出来るはずだった。

しかしこの構想は、あまりにも大胆過ぎた。多数の中国人を招き入れることに地域の人々の賛同を得られるのか。既存の商売を圧迫しないか。法律上の制約はないのか。こうした難問が浮上するにつれ、議論は再び行き詰まり、結局この構想はアイデアで終わってしまった。

中心市街地の空洞化は今日、全国各地に見られる。様々な試みがなされているが、決定打に乏しい。今求められているのは、「幻の中華街構想」ではないが、大胆で思い切った施策ではないだろうか。

(朝日新聞・三重版、カフェ日和 2010年6月11日掲載)

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