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ミニ用語解説:主題と表現


私達が、美術作品に接するとき、人それぞれによって、相異なる様々な見方があることはいうまでもない。

色彩・線描・構成・量塊など美術作品の造形的、視覚的な側面に着目して観照することも一つの方法である。この場合、私達受け手の側の感じ方、捉え方が先ず問題となるのであって、作品自身の側の問題(例えば、作品の持つ意味とか作者の主張等々)は、むしろ副次的に考えられているということもできよう。

人それぞれの見方、受け取り方が異なるのだから、様々な感じ方あるいは評価が生まれても、それは当然のことである。

他方、それとは逆に、作品の主題や意味内容(専門的にはイコノグラフイー《図像》)に重心を置いた見方も存在する。そこでは、美術作の主題・内容が重要な位置を占める。この解釈学的な見方を押し進めるとき、私達は、作品中に表現されているモチーフは勿論のこと、制作者が書き遺した記録や同時代史料などの文献資料にも多く頼ることとなる。

この場合にも、時代的にかなり以前に制作されていたり、文献史料が乏しく、解釈が困難な作品を巡っては、幾つかの意見を異にした説が生まれることは当然のことである。

無論、美術作品に対する、こうした二つの接し方は、全く別個に存在し得るものでたない。作品をより深く理解しようとすれば、主題と表現双方に目を向けることが必要である。自明のことである。

美術作品の主題と、形や色・画面構成などの造形的な要素とに密接な関係があることは、最近活発な日本のの中世・近世絵画、あるいは西洋のルネサンス・マニエリスム絵画などのイコノロジー(図像解釈学)的研究成果をみれば明らかである。画面の一隅に描き添えられた、私達が現代的な常識にとらわれて見過ごしがちなモチーフや表規に、深い意味が込められていることも珍しくない。

また、そうした意味を観る人に悟られまいとして、知的な趣向を凝らして制作しようとする意識が作家に働く場合もしばしばある。美術作品に込められた意味を説き明かし、その意味の造形的な要素を解明しようとする作業は意外に困難である。

〈学芸員 毛利伊知郎〉

友の会だよりno.19, 1988.11.15

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