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ジュルジュ・ブラック回願展

(11/3(火)-12/13(日))


桑名麻理
(学芸員)

ブラックは、作品を目にする機会が少ないせいかイメージというものが先行します。

キュビスムの画家ブラックと静物や室内を繰り返し描いたブラック。対照的なふたつのイメージにとまどうこともしばしばです。キュビスム絵画の創始、推進においてピカソとブラックのどちらが真に革命的でだったのかという議論は、今もってまだまだ余地がありそうですし、後期の静物や室内にフランスの詩人たちが惹かれていったことも、また事実です。

ところが原点に戻って、静物画としてよく観察すれば、こんなイメージ、どうでもよくなります。それほどに、ブラックの絵画は魅力的です。

ブラックは、静物について、「もし静物が手の届くところになければ、それは静物であることをやめる」と言っています。つまり、彼にとって重要だったのは〈見る〉こと以上に〈触る〉ことで、この〈触ることのできる空間〉を描こうとしてブラックのキュビスムは始まったのでした。美術の歴史としては、キュビスム絵画はルネサンス以来の伝統的な写実主義、遠近法からの解放として位置づけられます。けれど、彼にしてみればそれはあまりに客観的なこと、もっとなまなましい生理的な欲求を解決するための、絵画の実験だったのです。そこでブラック本人にはなれないけれど、なまなましい気持ちを想像しながら彼の静物画を眺めてみることにしました。

たとえばパピエ・コレ。カンヴァスに新聞紙や壁紙を貼りつける方法は、ブラックが考えだしたとされています。新聞紙や壁紙はそれ自体で触感に訴えますが、ブラックは、そのような紙を瓶やギターのかたちにし、画面の手前に積み重ねるように貼りました。触感の強調としてはじめられたパピエ・コレ、静物の積み重ねの描写として発展してゆきます。20年代から30年代にかけての作品群に数多くその例が見られます。

私は〈触感〉をキーワードにしましたが、ブラックの静物にはまだまだたくさんの絵画の実験を見つけることができそうです。

展示室には101点の作品が並びます。二度、三度と回を重ねて作品を眺めるうちに、ブラックの作品はその良さを知る、と言われています。それはきっと、彼のおこなつた実験の数々がじわりと私たちに見えてくるからなのだと思います。

友の会だより49号より、1998・11・25

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