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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 ミケル・バルセロ《イン・メディア・レス》 友の会だより115号 2021.7.30

表紙の作品解説 ミケル・バルセロ《イン・メディア・レス》

2019年 作家蔵

坂本龍太(三重県立美術館学芸員)

 スペインと言えば、闘牛を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。本作は現代を代表するスペイン人芸術家ミケル・バルセロが手掛けた闘牛をテーマにした作品です。大きな楕円が画面全体に広がり、一見、抽象画の様ですが、中央にはムレータ(闘牛士が使う赤い布)を翻して雄牛をかわす闘牛士の姿が見えます。
 ミケル・バルセロは1957年、地中海に浮かぶスペインのマジョルカ島に生まれました。1980年代にデビューを飾って以来、国際的に活躍しています。彼の作品の特徴は、巨大なカンヴァスと、そこに様々な素材を張り付けて三次元性を生み出すダイナミックな表現です。
 《イン・メディア・レス》も285×235×4cmの巨大な作品です。最後の4cmは、絵具に混ぜられた砂などによるカンヴァスの厚みを示します。画面では、細かい曲線が渦巻きとなり、見る人の視線を闘牛士と雄牛のいる中央にいざないます。タイトルの「イン・メディア・レス」は、「物語の核心に」を表すラテン語の「in medias res」を引用したもので、ここにスペイン語の「res(四足獣の意)」という言葉がかけられています。つまり、私たちは闘牛の核心である。闘牛士と雄牛が生死をかけてぶつかり合う、その瞬間を目撃しているのです。

*「ミケル・バルセロ展」(2021年8月14日(土)~10月24日(日)にて展示。

(友の会だより115号、2021年7月30日発行)

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