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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 宇田荻邨《梁》 友の会だより116号 2022.3.30

表紙の作品解説 宇田荻邨《梁》

1933(昭和8)年 絹本著色 186.0×180.0cm
松阪市(第一小学校)所蔵

道田美貴(三重県立美術館学芸普及課長)

 第14回帝国美術展覧会出品作である本作は、荻邨の母校、松阪市立第一小学校に寄贈され、地元で愛され続けている作品です。荻邨と故郷の繋がりを示すだけでなく、制作過程が明らかであるという点においても重要な作例です。写生帖から大下絵までが遺り、取材時期や場所が特定できる作品は多くありません。遺された写生帖には、《梁》制作に際し、荻邨がいつ、どこで、何を描いたか、という情報が詰まっています。荻邨は、8月10日に滋賀県甲賀郡の野洲川筋、3日後には多治見、さらに21日には京都の大堰川で梁や川瀬の写生を行いました。展覧会が翌月に迫った9月にも野洲川で梁や鮎を描いています。鴫を岡崎の動物公園で写生したこともわかっています。
 荻邨は、徹底した写生をもとに、梁簀の上で跳ねる鮎や勢いよく流れ落ちる水流、打ちつける雨という動的なモチーフと画面手前の岸辺、静かに揺れる野花、静止した鴫を構成し、本作を完成させました。絵画化には難しい梁漁という主題を装飾的で清らかな作品に仕上げた、昭和前期の荻邨の代表作です。

*2022年4月23日(土)から開催の「開館40周年記念 宇田荻邨展」で展示予定。

(友の会だより116号、2022年3月30日発行)

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