年報2020年度版 【収集資料の修復】
絵画作品の修復
1.狩野永良《架鷹図屏風》紙本墨画 二曲一双屏風の右隻
[修復前状態]
本紙表面に経年劣化による褐色がみられ、全体に汚れ、シミ、突傷、亀裂、虫損がみられた。また、本紙の接合部が大きくめくれており、下地の形状が表面に現れていた。
[修復工程]
(1) 本紙彩色箇所の脆弱な部分に剥落止め処置を行った。
(2) 屏風の縁を外し、本紙周囲の表具裂および表具裂下に貼られていた和紙(古文書の反故紙)を取り外した。
(3) 本紙を下地より取り外し、本紙表面を保護するために表打ちを行った。
(4) 本紙の汚れやしみを除去するために間接洗浄を行った。
(5) 旧肌裏打紙を除去し、1回目の裏打ちを行った。
(6) 本紙の欠損部に和紙を繕い、亀裂箇所や脆弱な部分には「折れ伏せ(裁断した和紙)」を施した後、2回目の裏打ちを行った。
(7) 表打ち紙を除去し、仮張りに貼って十分に乾燥させた後、下張りを終えた下地に修復した本紙を張り込んだ。
(8) 本紙の周りには裂を施し、裏面は唐紙を貼り込んだ。修復作業完了。
修復処置:宇佐美修徳堂
2. 藤田嗣治《ラマと四人の人物》 水彩・紙
[裏板の新調]
裏板は収蔵当時より板段ボールが使用されていたが、変色がみられたため新調した。マット装丁された裏面に保護用中性紙を挿入し、アーカイバルボード、ポリカーボネート中空複層パネルを設置してステンレス製の金具で固定した。
3. 福沢一郎《『ユリシィズ』》全8点 版画
[額縁新調およびマット装の交換]
マット装の形状:ブックマット形式、クリーム色2.5mm厚を使用。
4. 森秀雄《偽りの青空-古典的美容法》 油彩・キャンバス
画面中央についた付着物の除去を行った。
5. 吉原治良《作品》 油彩・キャンバス
額縁下部にみられた剥離部分の接着・固定を行った。
上記、2~5の処置は橋本三奈(学芸員、保存修復担当)が監督、実施した。