佐伯祐三《サンタンヌ教会》
1928(昭和3)年/油彩・キャンバス/72.5×59.7cm
曲がりくねった道の左右に、白い壁の建物が建ち並んでいます。画面の奥にそびえるのは、大きなドームを持つ教会。目をこらせば、教会の周囲には人影も見えます。季節は冬でしょう。どんよりとした空には重たい雲が垂れ込め、建物の煙突からは煙がたなびいています。画面はスピード感のあるタッチで描かれ、絵具を勢いよく削りとったあとや、投げつけられた絵具の塊も見られます。
描かれた「サンタンヌ教会」はフランス・パリ13区のビュット=オ=カイユ地区に建つ教会です。現地で撮影された写真と比較すれば、まっすぐの通りがジグザグに歪められ、教会の小さなドームが大きく描かれていることが分かります。
作者の佐伯祐三は、1923年に東京美術学校を卒業した後、ヨーロッパに向けて出発し、翌年1月にフランスの地を踏みました。この絵が描かれた1928年、佐伯は精力的にパリの街並みを描いていましたが、体調が悪化し、8月に30歳の生涯を閉じました。