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表紙の作品解説 ピエール・ボナール(1867 - 1947) 《ヴェルノンのセーヌ川》

1912年 油彩、キャンバス 34.3×55.8cm

貴家映子

 ボナールは、この絵が描かれた年の夏、フランス北西部ノルマンディー地方ヴェルノンに家を購入し「マ・ルーロット(私の幌馬車)」と名付けた。描かれているのは、恐らく、その裏庭付近から眺めた景色である。上流に7kmほど向かえばクロード・モネが住んだジヴェルニーの庭があり、この大画家が1926年に亡くなるまで親密な交流があった。
 この作品が描かれた1912年と言えば、キュビスムの絵画が公にされて1年が過ぎ、カンディンスキーが抽象絵画を創姶した頃である。めまぐるしく展開する前衛美術の諸運動を尻目に、ボナールはこの頃から、自宅や滞在先のホテル周辺の身近な景色を主題にした風景画の制作に力を入れるようになる。 19世紀末、ゴーギャンや日本美術に影響を受け、ナビ派の一員としてデビューした本画家は、 20世紀初頭になって印象派を再発見し、 「遅れてきた印象派」と呼ばれた。
 印象派との出会い以後、ボナールは、風景からインスピレーションを受けたその瞬間の感動を再現することを目指しつつ、装飾画としてふさわしい色と構成の追求を続け、後年には両者を統合させたような画面を生み出す。本作品では、即興的な筆致で随所に置かれた銀灰色の色斑が、川面や枝葉に反射する陽光の眩しさを伝えている一方で、霞む山並みを表現したパステル調のブルーや、木々の陰影に施されたブラックには、自由で独特な色彩感覚が発揮されている。画家が新しい探求の端緒に着いた頃の、小ぶりながら見飽きることのない一点である。
 昨年度三重県内の個人より寄贈を受け、 『ペスト・オブ・コレクション』展にて、当館では初めて公開される。
「開館35周年記念I ベスト・オブ・コレクション」展 2017年4月22日(土)-6月18日(日)
 

(友の会だより103号、2017年3月31日発行)

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