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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > アイスクリーム製造機

アイスクリーム製造機 (あいすくりーむせいぞうき)

アイスクリーム製造機

資料名 アイスクリーム製造機

商品名 ボントン

寸 法 幅19.8センチ 奥行き25.0センチ 高さ19.8セン

時 代 昭和初期

材 質 本体/ホウロウ製 シリンダー及び内部部品 /ステンレス製

その他 専用トレイ(ホウロウ製) 竹さじ 販売時の箱 取扱説明書

解説

 アイスクリームの季節がやってきました。年齢や性別を問わず、多くの人々に愛されている「アイスクリーム」。この冷たい食べ物の歴史は古く、古代ギリシャや古代ローマにおいて、万年雪に果汁やお酒をかけて食べたのが始まりといわれています。日本においても清少納言は、氷室で保管していた削り氷に甘葛(古代の甘味料)をかけて食べるのが高貴で雅なものと言っていますから、夏に食べる冷たい食べ物は、古代から人々の憧れだったようです。
 そして氷ではなく、アイスクリームを日本人が食べたのは、明治時代になってからのことです。当時のアイスクリーム製造機は、牛乳や卵などの材料を入れた容器を冷やしながら、材料自体をこねるもので、30分から40分間もこの作業を続けなければなりませんでした。アイスクリームを食べるためには、時間と体力が必要だったわけです。
 しかし、日本人は、開国とともにもたらされたアイスクリーム作りの道具や技術を、瞬く間にマスターし、更に改良を加えていきます。昭和初期に開発されたこのアイスクリーム製造機(ボントン)もその1つです。画期的だったのは、箱にも記されているように「五秒で凍る」ことです。その秘密は、従来の機器のようにアイスクリームの材料を冷やしながら回転(こねる)させるのではなく、氷と塩を入れたステンレス製のシリンダー容器を回転させて冷やすことにありました。アイスクリームの材料を本体に流し込み、シリンダー容器を回転させることにより、機器の中で冷えたシリンダー容器の一部分が液体の材料と接し、シリンダー容器の表面にアイスクリームが凍りつくというわけです。ゆっくりとシリンダーを回転させると、表面にどんどんアイスクリームが付着していきます。それを必要な分だけ「受け皿」で掻き落とすというわけです。これは、先の「五秒で凍る」というキャッチフレーズとともに、この機器の“売り”だったようで、昭和4年に公告されたこのアイスクリーム製造機の「実用新案出願公告第753号」でも、「本実用新案ハ右ノ如キ構造ヲ有スルヲ以テ製品ヲ入レタルママ随時受器ヲ函外ニ取出シ得ルノ効アリ従テ原料全部ノ氷結ヲ俟(ま)タサルモ必要ニ応シ迅速ニ其ノ需要ヲ充タシ得ラルルノ便益アル考案ナリトス」と必要な分量だけをすぐに作れることを強調しています。
 また、専用のトレイには、機器の取り扱い方法とともに「原料に就いて」という説明がつけられています。「ビール、サイダー等原料はどんな飲料水でも完全に凝結いたしますが」としながら、アイスクリームのレシピも書き添えてくれています。「牛乳一合、鶏卵二ケ、砂糖(大匙)二杯、コンスターチ(大匙)二杯」をよく混ぜて、とろ火であたためた後、水で冷却し、お好みの香料を2〜3滴入れ、そしてこのアイスクリーム製造機を用いるのです。
 材料は、現在家庭でアイスクリームを作る場合とそれほど変わりませんが、大きな違いは冷凍庫の有無。やはり「氷結」させるという技術に誰もが苦労をしたようです。アイスクリーム作り、それは決して“甘くない”作業だったのです。
 残念ながら、現在では、ボントンという会社は姿を消し、実用新案出願公告の考案者の住所から横浜市中区海岸通にあったと考えられる社屋も姿を消しています。実用新案の登録を行ったアイスクリーム作りの技術のその後に、何があったのかはわかりません。しかし、氷に卵に砂糖といった食材が手に入らない、「贅沢は敵だ」という時代に向けて、既に時局は静かに進んでいたのかもしれません。
 コンビニに行けば24時間アイスクリームが買える、冷凍庫を開ければアイスクリームが入っているといった、便利で、豊かで、平和な時代のありがたさ。暑い夏に、アイスクリームとともに、よくよく味わいたいものです。

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