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伊勢・古市麻吉(いせ・ふるいちあさきち)

資料名 伊勢・古市麻吉 (いせ・ふるいちあさきち)
時 代 明治時代以降
資料番号 347 寸 法 たて:37.3センチ
よこ:51.2センチ
解 説  今回は、春うららの桜の情景が描かれた伊勢古市の麻吉の版画をご紹介します。

 伊勢古市の麻吉は、かつて参宮客でたいそう賑わった古市の一角、現在の伊勢市中之町で今も旅館として営業を続けられている老舗です。残されている古い看板には嘉永(かえい)4(1851)年の創業と見えますが、『古市街並図』(天明2(1782)年)や十返舎一九の『東海道中膝栗毛』(文化3(1808)年)にも、その名が見られることから、創業200年以上と考えられています。明治の初め頃、伊勢音頭が踊られる舞台を備えた宇治山田町(当時)第一の料理店として繁昌し、その後旅館に転じています。
 麻吉の建物は、参宮街道からやや東に奥まった斜面に沿って、本館を中心に階段や廊下でつなげられる平屋・2階・3階建の建物が建ち並び、一番下の土蔵から数えると最上部まで、全体として5階にわたる構造となっています。最上階の最も眺望のよい北東隅には、この版画の画題に「高楼聚遠(こうろうしゅえん)」と紹介されている24.5畳の広間「聚遠楼(しゅえんろう)」が配され、この広間からは五十鈴川から朝熊山かけての広壮な風景を望むことができます。麻吉旅館は、斜面に沿って建つ建物の折り重なった複雑な屋根構成と板壁・格子戸などが調和した独特の景観をもち、かつて全国からの参宮客を迎え入れた古市の繁栄を現在に伝える貴重な建物として、平成17年2月に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。
 この版画は、大ぶりの和紙に多色刷りされた麻吉の宣伝用のもので、右端に「旅籠屋 料理屋 いせ古市 あさ吉」と記され、左半に「聚遠楼祝歌 四季のけしき」が掲載されています。建物群全体が東斜面側のやや高い位置からみた構図で描かれ、広間「聚遠楼」がある最上部の寄棟造桟瓦葺(よせむねつくりさんがわらぶき)の建物から、斜面に沿っていくつもの建物が重なるように建ち並んでいる様子がよく表されています。建物群の周辺には、薄桃色の満開の桜が咲き誇り、周囲の木々の明るい緑と一体となっています。また、広間をはじめ窓が開け放たれた各々の客間では、人々が窓外の春の風情を楽しみながら談笑する様が描かれ、中には花に誘われて桜の樹の元に敷き延べた緋毛氈(ひもうせん)で宴を催す姿も見え、画面全体に春爛漫のはなやいだ情景が展開しています。
 満開の桜の頃、なぜかしら、誰もが心が弾み、楽しい心持ちになるのは、今も昔も変わらない桜の不思議な魅力と言えましょう。(SG)
 


伊勢・古市麻吉
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