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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > オオタニワタリ Asplenium antiquum Makino

オオタニワタリ(Asplenium antiquum Makino


オオタニワタリ 直径1.5mほどの株(紀北町大島)
和 名  オオタニワタリ
学 名  Asplenium antiquum Makino
資料番号  MPMP 29082
分 類  シダ植物
 
チャセンシダ科
採集年  1950年
採集地  三重県 北牟婁郡 紀伊長島町(現 紀北町)
資料形態  さく葉標本

オオタニワタリ(さく葉標本)
解 説

 

オオタニワタリは常緑性のシダ植物で、伊豆諸島・紀伊半島・九州(西部・南部)・琉球などの暖地でみることができます。三重県内の生育地は、黒潮が流れる温暖な紀北町の大島に一か所知られているのみで、ここが日本におけるオオタニワタリ生育地の北限となっています。現在、大島は国指定の天然記念物「大島暖地性植物群落」(昭和32年7月10日指定)として島全体が保護されています。さらにオオタニワタリは、三重県内に生育する絶滅のおそれのある種類として「三重県指定希少野生動植物種」にも指定され、手厚くまもられています。以前は四国地域の高知と徳島にも生育地がありましたが、現在は野生絶滅したと考えられているため、和歌山県と三重県でみられるオオタニワタリは、他の生育地とかなり離れ、飛び地のような分布となっています。

オオタニワタリを漢字で記すと「大谷渡」となります。これは生育地である谷間のやや湿った樹林内で、樹幹や岩上に着生している姿を、シダが谷を渡っているとたとえたものとされています。県内唯一の生育地である紀北町の大島では、海に面した崖の上にあるやや湿った谷状地形の斜面に群落が見られます。

日本に生育するオオタニワタリの仲間としては、オオタニワタリ、シマオオタニワタリ、ヤエヤマオオタニワタリ(以前はリュウキュウトリノスシダとされていた)の3種が知られています。オオタニワタリの仲間の特徴は葉の形にあります。多くの種類のシダ植物には、葉の縁に多数の切れ込みがある羽状分岐がみられ(別図参照)、これが一般的なシダの葉のイメージとなっています。しかし、オオタニワタリの仲間の葉では、縁の切れ込みがみられない単葉全縁であり、長さ1m近い葉を根元から放射状に広げる大型シダであることから、見た目からも他のシダとは明確に区別することができます。その一方で、オオタニワタリの仲間である3種はよく似ているため、種類を判別(同定)するためには葉の細部の違いで見分ける必要があります。同定のポイントとしては、葉の裏についている「胞子のう群」(ソーラス)の長さや、「中肋」(葉の中央の軸)の形状などがあります(別表参照)。

オオタニワタリは、大きな葉を生け花に使ったり、鉢植えなどの園芸植物として、主に観賞用に利用されています。オオタニワタリの仲間は欧米でもBird's nest fern(鳥の巣シダ)と呼ばれ人気があります。また、琉球南部の八重山地域ではヤエヤマオオタニワタリの若芽を食用としています。歴史の中では『古事記』の仁徳天皇条に記された、皇后磐之媛(いわのひめ)が木国(熊野)で採った「御綱柏(みつながしわ)」をマルバチシャノキやアオノクマタケラン、カクレミノなどの葉とする諸説がある中で、オオタニワタリを指すとの意見もあります。(M)



シダ植物の葉の形状例

葉のうらにある胞子のう群(ソーラス)

紀北町大島の生育環境
別表
3種の判別については細部の確認が必要となります。以下にオオタニワタリの仲間を区別するポイントを整理しました。

オオタニワタリ
(
Asplenium antiquum Makino)

葉の裏にある胞子のう群(ソーラス)が中肋(葉の中央の軸)から葉縁近くまで伸びる。

シマオオタニワタリ
(Asplenium nidus L.)

葉の裏にある胞子のう群は中肋から葉縁の中間以上に伸びない。葉の中肋は胞子のう群の付く裏面でほぼ扁平。屋久島・種子島以南の琉球と小笠原北硫黄島にみられる。
ヤエヤマオオタニワタリ
(Asplenium setoi N.Murak. et Seriz.)
葉の裏にある胞子のう群は中肋(中央の軸)から葉縁の中間以上に伸びないものが多い。葉の中肋は胞子のう群のつく裏面で著しく盛り上がり2段にみえる。沖縄本島以南と小笠原にみられる。
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