天然記念物緊急対応マニュアル(市町教育委員会向け)
このページは市町教育委員会向けです。 |
天然記念物には、地域を定めない天然記念物として様々な野生動物が指定されています。また、これらは鳥獣保護法や種の保存法など他法令による規制がかかっているものも含まれ、これらに関する知識も必要とされます。
このページは、天然記念物について、緊急的に対応しなければならない事象が発生した場合における市町教育委員会に求められる対応について、記載したものです。
なお、すべての事象を網羅しているものではありませんので、発生した事象に応じて、臨機応変に対応することが必要です。
地域を定めない天然記念物
1.想定される事象ごとの一般的な対応方針
この章は、一般的な対応方針を記載する。次章の種別ごとの対応事項と合わせて見たうえで、対応すること。
(1) 死亡個体が確認された
● 法的位置付け
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文化財保護法・条例では、死亡個体は対象外であることから、許可は不要。
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死亡個体の採取は、鳥獣保護法上の許可は不要。また、死亡個体の採取は、採取場所が自然公園特別保護地域であっても、自然公園法上の許可は不要。
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種の保存法で国内もしくは国際希少野生動植物種に指定されているものについては、死亡個体(一部器官含む)の譲渡することに環境省の許可が必要。
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家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病に罹患していた場合、大きな問題になる可能性がある。
● 対応方針
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市町教委は、県教委に連絡をするとともに、現地を確認する。
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家畜伝染病予防法に基づく法定家畜伝染病が疑われる場合は、県傷病鳥獣保護担当部局(みどり共生推進課もしくは出先の該当農林事務所森林・林業室。以下県鳥獣保護部局。)に連絡し、指示を受ける。
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県教委もしくは市町教委は、可能であれば、総合博物館に連絡をとり、標本として必要かどうかを確認する。
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市町教委は、死亡個体の記録を取る。【場所、個体の状況、現場写真、わかれば死亡原因等】
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後日、市町教委は、滅失届を提出する。
(2) 衰弱している・怪我をしている
● 法的位置づけ
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文化財保護法・条例では、衰弱個体等の保護のための一時的な対応は、「維持の措置」となるため、許可は不要。
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鳥類・ほ乳類の場合は、鳥獣保護法により、基本的には許可なく捕獲することはできない。県や市町の中で、鳥獣保護法の捕獲許可を持つのは、県鳥獣保護部局。
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種の保存法で国内希少野生動植物種に指定されているものの捕獲行為は基本的には環境省の許可が必要であるが、傷病のために捕獲する行為は適用除外されている。
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種の保存法で国内もしくは国際希少野生動植物種に指定されているものは、死亡個体(一部器官含む)の譲渡することに環境省の許可が必要。
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家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病に罹患していた場合、大きな問題になる可能性がある。
● 対応方針
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市町教委は、県教委に連絡をするとともに、現地を確認する。
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市町教委は、記録を取る。【場所、個体の状況、現場写真等】
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家畜伝染病予防法に基づく法定家畜伝染病が疑われる場合は、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受ける。
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鳥類・ほ乳類の場合、鳥獣保護法により県教委や市教委には捕獲等の権限がないことから、県教委は、県鳥獣保護部局に、現地を確認し、対応するように連絡する。基本的には、捕獲を伴う保護はしないが、鳥類や小型のほ乳類等、鳥獣保護部局の協力獣医が受け入れできる場合もある。
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現地では、まず、安全な場所に移動させるなどの一時的な対応をする。(トキやコウノトリなどは、クチバシによる攻撃は失明や指の切断など恐れがある。また、イヌワシもツメやクチバシのよる攻撃は、とても危険なので、一時的な対応を実施する場合、安全対策をしっかりしたうえで実施する。その他の動物においても安全対策をすること。)
- 一時的に保護した個体を継続して飼育をする場合は、現状変更許可が必要となるので、現状変更許可申請を出す。(後日で可)
(3) 単に見つかった
● 法的位置づけ
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文化財保護法・条例では、保護を目的としない捕獲行為は、許可が必要。
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鳥類・ほ乳類の場合は、鳥獣保護法により、基本的に許可なく捕獲することはできない。
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種の保存法で国内希少野生動植物種に指定されているものの捕獲行為は環境省の許可が必要。
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家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病に罹患していた場合、大きな問題になる可能性がある。
● 対応方針
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市町教委は、県教委に連絡をするとともに、現地を確認する。
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市町教委は、記録を取る。【場所、個体の状況、現場写真等】
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家畜伝染病予防法に基づく法定家畜伝染病が疑われる場合は、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受ける。
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捕獲されている場合は、所有者に対して、もとのところに戻すよう指導する。(ただし、捕獲した場所に戻せない場合、「少し離れた生息適地に戻す」「どこか保護施設で飼育する」などの検討をする必要がある。)
(4) 違法捕獲の疑いのある事象があった
● 法的位置づけ
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文化財保護法では、第195条により、5年以下の懲役もしくは禁固又は30万円以下の罰金。条例では、第53条により20万円以下の罰金又は科料。(詳細は、各法、条例を見ること。)
● 対応方針
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市町教委は、県教委に連絡するとともに、現地を確認する。
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現地確認で、違法捕獲の疑いのある事象であることが確認された場合、最寄の警察署に連絡する。(事象によっては、現地確認をする前から県警に連絡をとっておく場合もある。)
2.種別ごとの対応事項
この章では、種別ごとの対応事項や留意事項について記載する。
(1) 国特別天然記念物カモシカ
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三重県内では、鈴鹿山地や紀伊山地で確認される。
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対応Q&A、記録表、角鞘やDNA標本の採取マニュアルが整備されているので、それらを利用すること。 URLは次のとおり。
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/bunkazai/60008039863.htm
(2) 国特別天然記念物オオサンショウウオ
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三重県内では、木津川流域(伊賀市、名張市、津市太郎生)で生息が確認されている。また、亀山市加太に1個体が生息している。その他の地域でも、桑名市の木曽三川で上流からの流下個体が確認されるなど、たまに確認される。
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オオサンショウウオ保護管理指針の最終ページに調査票があるので、個体を保護した際や、滅失した際は利用すること。
○ オオサンショウウオ保護管理指針のダウンロードHP
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/common/content/000146724.pdf -
滅失個体や捕獲個体のマイクロチップの確認をすることが望ましい。
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再放流する場合、マイクロチップのない個体にはマイクロチップを挿入して個体識別できるようにしたうえで、再放流することが望ましい。
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マイクロチップの確認や挿入については、県教委と相談して実施する。
(3) 国天然記念物ネコギギ
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三重県内では、伊勢湾流入河川の中上流部で生息が確認されている。
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ネコギギが見つかったとの連絡があった場合は、ネコギギ保護管理指針P50資料7に掲載している「ネコギギの誤捕の取り扱いについて」に従って対応すること。
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ギギとよく間違われることが多い。ネコギギ保護管理指針P51を見ること。
○ ネコギギ保護管理指針ダウンロードHP
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/common/content/000146722.pdf
(4) 県天然記念物オオダイガハラサンショウウオ
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三重県内では、主に紀伊山地で生息が確認されている。
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オオダイガハラサンショウウオ保護管理指針が整備されている。P33の資料6に調査記録票があるので、個体を保護した際や、滅失した際は利用すること。
○ オオダイガハラサンショウウオ保護管理指針ダウンロードHP
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/common/content/000146745.pdf
(5) 国特別天然記念物コウノトリ
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三重県では、コウノトリの郷公園の放鳥個体や、大陸からの迷鳥がたまに見られる。
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種の保存法により、国内希少野生動植物種に指定されている。生きている個体だけでなく、死亡個体や、羽一枚でも、捕獲・譲渡(所有権もしくは占有権の移動)には、事前に環境省の許可が必要である。コウノトリの死亡個体は、コウノトリの郷公園が死亡原因の調査などに必要な場合がある。コウノトリの里公園の指示で死亡個体の回収をしないと、環境省の許可が下りるまで、コウノトリの郷公園にその個体を渡せなくなるので注意。(コウノトリの郷公園の指示で回収した場合、当初から所有者もしくは占有者はコウノトリの郷公園にあるため、環境省の許可は不要。)
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
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コウノトリの郷公園の放鳥個体の識別は、以下のHPを参照のこと。
http://www.stork.u-hyogo.ac.jp/in_situ/in_situ_ows_num/
(6) 国特別天然記念物アホウドリ
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三重県では、平成22年6月に、伊豆諸島で環境省が放鳥した幼鳥が志摩市で保護された例がある。
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脚帯があるなど、放鳥個体である可能性がある個体の場合は、環境省野生生物課に連絡し、その指示を受けること。
環境省(代表) 03-3581-3351
環境省中部地方環境事務所 052-955-2130 -
種の保存法により、国内希少野生動植物種に指定されている。生きている個体だけでなく、死亡個体や、羽一枚でも、捕獲・譲渡(所有権もしくは占有権の移動)には、事前に環境省の許可が必要である。
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
(7) 国特別天然記念物トキ
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三重県では生息は確認されていないが、放鳥されたトキが飛来する可能性がある。
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佐渡トキ保護センターに連絡し、その指示を受けること。
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種の保存法により、国内希少野生動植物種に指定されている。生きている個体だけでなく、死亡個体や、羽一枚でも、捕獲・譲渡(所有権もしくは占有権の移動)には、事前に環境省の許可が必要である。トキの死亡個体は、佐渡トキ保護センター(以下トキ保護C)が死亡原因の調査などに必要な場合がある。トキ保護Cの指示で死亡個体の回収をしないと、トキ保護Cの許可が下りるまで、トキ保護Cにその個体を渡せなくなるので注意。(トキ保護Cの指示で回収した場合、当初から所有者もしくは占有者はトキ保護Cにあるため、環境省の許可は不要。)
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
(8) 国天然記念物イヌワシ
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鈴鹿山地や、台高山地で生息が確認されている。
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種の保存法により、国内希少野生動植物種に指定されている。生きている個体だけでなく、死亡個体や、羽一枚でも、捕獲・譲渡(所有権もしくは占有権の移動)には、事前に環境省の許可が必要であるので注意。
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
(9) 国天然記念物コクガン
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三重県では、伊勢湾岸の河口や干潟に越冬のため毎年飛来している。
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
(10) 国天然記念物オオワシ、オジロワシ
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三重県では、紀北町や尾鷲市に越冬のため飛来している。
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種の保存法により、国内希少野生動植物種に指定されている。生きている個体だけでなく、死亡個体や、羽一枚でも、捕獲・譲渡(所有権もしくは占有権の移動)には、事前に環境省の許可が必要であるので注意。
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
(11) 国天然記念物カンムリウミスズメ
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三重県では、紀北町の沿岸に繁殖のため毎年飛来している。
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
(12) 国天然記念物カラスバト
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三重県では、紀北町、尾鷲市の離島で周年生息している。
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死亡個体または傷病個体が見つかった場合は、家畜伝染病予防法により指定されている高病原性鳥インフルエンザに罹患している疑いがあるので、県鳥獣保護部局に連絡し、指示を受けること。
(13) 国天然記念物ヤマネ
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三重県内の森林で生息が確認されているが、県内での生息状況は不明な点が多い。
(14) 国天然記念物オカヤドカリ
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もともと、亜熱帯性のヤドカリであるが、近年、和具大島で確認された。県内での生息状況は不明な点が多い。
巨樹銘木・樹そう
1.想定される事象ごとの対応方針
樹木の倒伏や折損があった
- 市町教委は、県教委に連絡をするとともに、現地を確認する。
- 交通の障害、家屋等への被害および危険性など緊急的な除去が必要な場合は、「維持の措置」として除去の実施を認める。
- 市町教委は、所有者もしくは管理者にき損届を提出するように指導する。(当日でなくても可)