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終戦とGHQ三重軍政部の記録


 今年もまた、私たちは終戦記念日を迎えました。戦後50年近く経った現在、戦争を実体験として記憶している人々はだんだん少なくなってきています。しかし、戦争のもたらす悲劇は、永遠に忘れてはならない事実として、二度と繰り返してはならないという誓いと共に、これからも私達の間に語り継がれていくことでしょう。
 さて、最近新聞等でよく取り上げられている話題の一つに、GHQの記録文書の記事があります。今日は、そのGHQと三重県の関係について簡単にお話したいと思います。
 GHQとは、正しくはGHQ/SCAP、つまり「連合国最高司令官総司令部」の略で、敗戦国となった日本の今後を統括、指導していくためのマッカーサーを頂点とした連合軍の機構であり、一般には占領軍とか進駐軍とか呼ばれているものです。昭和20年(1945)ポツダム宣言の受諾に伴い、日本は、新しい秩序を確立するまで、そして、再び戦争を引き起こさないという確証が得られるまでの間、連合軍の占領下に置かれることになりました。10月2日東京に本部が開設され、日本に対する管理政策が始まりました。
 GHQは、日本全土をくまなくその管理下に置くために、沖縄を除く46の都道府県に一つずつ軍政部と呼ばれる末端組織を設置しました。三重県の軍政部は、終戦の翌年7月に、旧三重県会議事堂、今の県民サービスセンターの場所に開設され、本格的に活動を開始します。
 では、実際に三重軍政部はどのような活動をしたのでしょう。軍政部は、県の経済、法律・行政、公衆衛生、公共福祉、民間教育・情報と、ありとあらゆる方面にわたって、調査と対策そして指導を行っています。例えば、農産物や漁獲高、さらに特産物の調査、裁判の実行、選挙の監督、DDTによる消毒、病院設立の指導、教科書の配給、教職員の適性検査といった具合です。そうして、これらの活動は月ごとまたは2週間ごとにまとめられ、あるいは何か特別な事件のあったときにはその旨まとめられ、月例報告書・特別報告書という形で東海北陸軍政部に送られ、指示を受けていました。
 こうした三重軍政部の活動は昭和24年まで続きますが、これらの活動報告書は全国各地の報告書と共に膨大な数となってアメリカの公文書館に保存されており、日本の国立国会図書館がマイクロフィルムで収集しています。三重県史編さん室では、三重軍政部の報告書の部分を複写収集し、現在、その内容を少しずつ調査・研究しています。

(平成6年8月 井上しげみ)

三重軍政部の前で(槌谷定子氏蔵)

三重軍政部の前で(槌谷定子氏蔵)

月例報告書の一部

月例報告書の一部

参考文献

「現代政治史資料室所蔵日本占領関係資料の現況」 国立国会図書館月報』244 昭和56年
福島鑄郎『GHQの組織と人事』巖南堂書店 昭和59年
松村勝順「GHQ/SCAP文書と戦後教育改革―三重軍政部の活動を中心として―」『三重県史研究』創刊 号 昭和60年

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