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41 津祭りの「しゃご馬」


Q 秋に行われる津祭りでは、唐人踊りのほか色々な出し物があり、大変面白いですが、私が興味を持った練り物があります。それは、鬼面をつけ、赤毛のかつらをかぶり、陣羽織を着て、腰に張り子の馬をつけたもので「しやご馬」と呼ばれているものです。どんな歴史があるのですか。

(平成八年二月 県内個人)
A 津の祭りは、第二代津藩主藤堂高次が絶大な奨励と援助を行い、「八幡宮祭礼」として開催されたことが始まりと言われています。そして、幾多の変遷を経て現在の津祭りとなっているのです。
 「しゃご馬」については、明暦二年(一六五六)に完成した『勢陽雑記』巻三の「安濃郡 八幡宮祭礼行列次第」に、その記録があります。と言っても、『勢陽雑記』の写本の中には各町の行列内容を省略していることが多く、昭和十四年発行『安濃津郷土会誌』第十号に引用されているものは詳しく、それを次に掲げます
   同(三番) かなや町(な衍カ) 石引
   町印持二人 金の馬塔、銀のひやうたん、糸柳
   石引者三十人 銀のたんたん筋の帷子、すけ笠、内一人けやり、三人てこ
   籠馬に乗二人 申曳き馬、たはむれに立換へ馳廻る
   警固二十人 いろいろの出立也
   町の長五人 上下  ※( )は注記
 これは、茅町(のちの万町、別の写本では「加屋町」とある)の行列「石引き」の構成ですが、この中に「籠馬」とあり、「しゃご馬」が登場しているわけです。
 しかし、「しゃご馬」という言葉については「籠馬」の転訛と見るより、別の考え方があります。
 すなわち、「シャグマ」とは、赤く染めたヤクの毛で作ったかつらをいい、神の宿るものとして、これをかぶり,行列などの先頭に立ったり、警護をしたりする例が現在の祭礼に残っていたりします。例えば、松阪市小阿坂町や伊勢市佐八町のカンコ踊りにも「シャグマ」と呼ばれるかぶりものがあります(『三重県の民俗芸能』)。また、室町時代の書物においても「赤熊・赭熊」の字を当てた例があり、さらに、四国の淡路などでは「シャゴマ」とも言われるそうです(『日本国語大辞典』)。
 こうしたことから、「しゃご馬」は「シャグマ」「シャゴマ」に由来すると考えた方が妥当であるようです。この「しゃご馬」は、平成九年三月五日付けで津市の無形文化財として指定され、津民芸保存会が中心となって、この伝統芸能の保存・継承に努力されています。

参考文献

『安濃津郷土史会誌』第十号 安濃津郷土史会 昭和十四年
『津市民文化』第二号・十七号 津市教育委員会 昭和五十年・平成二年

写真 津市教育委員会提供

写真 津市教育委員会提供

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