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みえの文化団体詳細

地域 中勢地域
団体名 三重ヴォ―クスボーナ

ヴォークスボーナ・タイトル画像
令和4年度津市民文化祭(音楽部門)「合唱音楽」に出演した三重ヴォ―クスボーナの皆さん

プロフィール  三重ヴォークスボーナの前身である「NHK三重放送合唱団」が、NHK津放送局専属の楽団として、昭和 27 年に創立されました。昭和 38 年に一般合唱団となり、団名も三重ヴォークスボーナに改称されます。「市民合唱団として皆に親しまれること」と「技術的向上を目指すこと」の二本柱で合唱活動を続け、令和4年に創立 70 周年を迎えました。

 今でこそ三重県や津市に多くの合唱団があり、三重県合唱連盟を構成しています。三重ヴォークスボーナも毎年参加する「津市民文化祭」音楽部門(合唱音楽)など、合唱団が一堂に会するイベントは大いに盛り上がります。それに対して、同団の前身となる合唱団は、戦後まもなく、市民が合唱できる場が何もないところに誕生しました。当然、その頃に連盟はありません。三重の合唱の歴史そのものといっていい合唱団です(『三重県史』通史編「近現代2(下)」684p、なお712p739p参照)。


 その長い活動期間で、三重ヴォ―クスボーナは継続して合唱コンクールに出場してきました。全日本合唱コンクール全国大会では、平成4年と平成5年に銅賞、平成 15 年に銀賞を受賞するなど、三重県を代表する合唱団として優れた成績を収めています。その実績が評価され、昭和 46 年に三重県文化奨励賞、平成6年に津市文化奨励賞、平成 14 年に三重県文化賞の文化功労賞を受賞しました。

 同合唱団は、原則として毎年、定期演奏会を開催しています。通常の合唱に加え、ミュージカルや合唱オペラなど、動きのあるステージも積極的に取り入れて来ました。昭和 28 年に第1回定期演奏会を開催して以来、令和4年の70周年記念定期演奏会が65回目の開催となりました。平成 14 年の創立 50 周年記念第46回定期演奏会では、能や狂言を基にした合唱オペラ「幽玄」を上演し、大成功を収めています。教会でのクリスマスコンサートの開催や、三重県合唱祭、津市民音楽祭への出演など、地域に根差した活動も大切にしてきました。


 また、歴代の指揮者や音楽監督を、三重県を代表する音楽家が務めてきたことも注目されます。たとえば、昭和54年から平成14年までの長きにわたり常任指揮者を務め、令和5年現在、名誉指揮者となっている稲葉祐三さんは、平成23年の第11回三重県文化賞で文化大賞を受賞し、令和3年には、第57回県民功労者表彰の文化功労を受章しました。そして、稲葉さんの跡を継いで常任指揮者・音楽監督を務め、同じく名誉指揮者となった羽根功二さんも、平成25年の第13回三重県文化賞で文化功労賞を受賞しました。一線の音楽家がさらに実力を磨き、実績を積み重ねる場となってきたことも、この合唱団の偉大な功績の一つといえます。

参考)声楽家 稲葉祐三さん
第57回(令和3年)県民功労者表彰 文化功労受章者
https://www.pref.mie.lg.jp/BUNKA/HP/m0054400340.htm


 このように、三重ヴォ―クスボーナの活動は、三重県における音楽文化の振興に大きく寄与しています。その果たしてきた功績から、令和4年、文部科学大臣による地域文化功労者表彰の被表彰者となりました。


昭和27年(1952) 前身であるNHK三重放送合唱団設立
昭和28年(1953) 第1回定期演奏会(以降、原則毎年開催)
昭和38年(1963) 三重ヴォ―クスボーナと改称
          第3回三重県合唱コンクール第1位(以降、毎年出場)
昭和39年(1964) 第4回三重県合唱祭出演(以降、毎年出演)
昭和46年(1971) 第1回三重県文化奨励賞
昭和50年(1975) 第35回国民体育大会・開会式、閉会式参加
昭和54年(1979) 稲葉祐三さん常任指揮者就任(平成14年まで)
昭和56年(1981) 第1回三重音楽祭
昭和62年(1987) 第15回津市民音楽祭(以降、毎年出演)
平成6年(1994) 津市文化奨励賞
平成9年(1997) 第3回みえ県民文化祭オペラ部門公演
平成14年(2002) 第2回三重県文化賞・文化功労賞
         創立50周年記念第46回定期演奏会
         羽根功二さん常任指揮者・音楽監督就任(令和3年まで)
平成15年(2003) 第56回全日本合唱コンクール全国大会銀賞
令和3年(2021) 北後知尋さん常任指揮者就任(令和5年現在)
令和4年(2022) 文部科学大臣による地域文化功労者表彰

記事  三重ヴォ―クスボーナが最も大事にしていることの一つは、「市民合唱団であること」です。

 入団に条件はありません。中学卒業が一応の目安ですが、合唱や音楽の経験は問われません。以前、楽譜を読めない入団希望者がいましたが、団を挙げてその人をフォローし、しっかり活動ができたそうです。

 仕事などが忙しい人のため、団員で話し合って、毎週の練習のうち月1回参加すればいいという「月1団員」の制度も作りました。制度を利用している方は、「練習に行けない日が続くと、皆に申し訳ないと退団を考えがちですが、ボーナの場合、『忙しいのによく来たね!』と温かく迎えてくれるので続けられています」と話します。

 同合唱団の主要な活動の一つである合唱コンクールへの出場も、全員参加が原則です。レベルの高い人を選抜し賞を狙うことはしません。代表の宇陀正人さんは、「どれだけ上の賞を取ったかという結果も大事ですが、その上を目指す過程も同じくらい重要だという姿勢で活動しています」と言います。また、常任指揮者の北後知尋さんも、「仕事ではなく趣味として集まった市民合唱団は、楽しくなければ意味がない」と考えています。

 「市民合唱団」であることは、代々の指導者が大事にしてきた方針です。とくに、とても長く常任指揮者を務めた稲葉祐三さんは、日本がまだ昭和の時代、ヨーロッパではクラシック音楽文化が一般市民に当たり前に浸透していることに衝撃を受け、日本そして三重で、少数の音楽レベルを上げることより、音楽を楽しむ仲間を広げることを大事にし続けた人です(上述のページ参照)。北後さんは、津高校音楽部で、直接稲葉さんから指導を受けました。

 北後さんの本来の専門はピアノで、高校時代からピアニストとして実績を重ねています。この団でも長くピアノ伴奏を担当しました。合唱の活動は趣味の範囲に入るもので、元々は一般団員と同じ扱いでの入団です。それでも、稲葉さんの後を継ぎ常任指揮者兼音楽監督となった羽根功二さんから、音楽家としての指導力を認められ後任に指名されました。声楽や合唱指導の実績で指揮者となるのとは異なる経緯です。他の団員とともに歩んだ活動の中で培われた北後さんの姿勢は、同団の歴史や思想をより純粋に受け継ぐものといえるかもしれません。



 誰もが参加できる市民合唱団であることを大事にする一方で、三重ヴォークスボーナでは、質の高い演奏が目指されています。

 北後さんは、「合唱を楽しむには、きれいなハーモニーになることが必要です。そうでなければ歌っていて気持ちよくありません。誰もが楽しんで参加できることと、質を高めることは、意味が重なります」と話します。

 そんな理想の状態は、団員一人ひとりの真剣な取り組みで実現されています。多くの団員は本業で忙しい毎日を送っていますが、少しでも都合をつけ、遅刻しても練習に駆け付け、全体練習は高い出席率を誇ります。練習日以外も合唱のことを考え、通勤の車内のカーステレオで音合わせの自習をするなど時間をやり繰りして、全体練習に備えます。一部の団員同士で自主トレを組む人もいます。

 その団員の取り組みを、指揮者の指導力が支えます。団員は三重を代表する音楽家から指導を受けてきました。その音楽家たちに後を託された北後さんも、その責任を受け止め、真剣に指導をします。もちろん、いわゆるスパルタ指導とは異なります。団員一人ひとり、ひとパートひとパートの声を聴いて、どう合わせていけばハーモニーが生まれるか、丁寧に調整していきます。ときには各団員から寄せられる質問、提案、要望などに、練習の最中にも耳を傾けます。指導から得た課題やヒントを各団員が持ち帰り、自主練習や一部有志の共同練習で活かして、次の全体練習の質を上げていきます。

 同団は比較的多くの合唱行事に参加し、1〜2か月に一度は人前での演奏の機会があります。そのことでモチベーションを維持し、毎回の全体練習で質を上げていきます。忙しくなり過ぎず、楽しんで続けられる活動を、団員を代表する委員会の合議で決めます。

 これらが噛み合うことで、三重ヴォークスボーナの合唱は、とても美しいハーモニーを奏でます。



 三重ヴォークスボーナの70年の長い歴史が、このハーモニーを支えています。

 この合唱団には、とても長く歌い続けている人がたくさんいます。10年20年は普通、50年も参加している人も。合唱の楽しさをたくさん知り、それが運営に反映されます。ずっと質の高い指導を受けてきた人たちです。

 宇陀代表に今後の目標をお聞きすると、「歴史を途絶えさせることなく、80年90年100年と、受け継がれてきたものを継承していきたいです」と。



 ステージで奏でられる三重ヴォークスボーナの演奏を聞きながら、この美しいハーモニーがこれからもずっと流れ続けてほしいと思いました。


ヴォークスボーナ左画像
文部科学大臣による地域文化功労の表彰状を持つ宇陀代表(上)と、津市民文化祭(音楽部門)「合唱音楽」で演奏をする三重ヴォークスボーナ(下)
ヴォークスボーナ右画像
三重ヴォークスボーナの全体練習で指導する常任指揮者・北後知尋さん(上)と、その全体練習風景(下)
問い合わせ先 三重ヴォ―クスボーナ 代表 宇陀正人 090-2770-1122
e-mail mie.voxbona1952@gmail.com
ホームページ 三重ヴォークスボーナ公式サイト
取材機関 三重県 環境生活部 文化振興課
津市広明町13
TEL:059−224−2176
FAX:059−224−2408
登録日 令和05年4月13日

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