資料詳細

『古代史』より「うるわしのナルキッソス」

項目 内容
コレクション
ジャンル 版画
作者名 ドーミエ、オノレDAUMIER, Honoré
制作年 1842
材料 リトグラフ・紙
寸法 33.2×24.6
署名
寄贈者
来歴
初出展覧会
作品名欧文 Le beau Narcisse (From "Histoire ancienne")
サイト
解説 ナルシシズムと聞けばすぐにうぬぼれや自己愛に変換できるほど、日本語にもなじみの深い単語である。その由来が鏡に映った姿を我と知らず、恋い焦がれたギリシャの美青年であることも、正確な典処は知らずとも、耳学問で仕入れた人は多いだろう。
オヴィデウスの「変身物語」によれば、ナルシスには一途な思いをかけてくれるエコーという美少女がいたが、けなげな愛を無残に足げにしてしまう。神の怒りを買った美ぼうの若者は、罰として水に映った自らの姿を愛する運命となるのだ。もちろん、ナルシスの自ら容姿を誇る高慢さは、現代の「ナルシシズム」に通じるが、ここは愛についての悲しいすれ違いがある。
エコーは口が災いして、話しかけられる最後の一言しか繰り返せない。ナルシスは真の愛を知らず、決して報われない空蝉(うつせみ)の美に身をやつす。エコーは木霊の響きに、ナルシスは水仙の花に姿を変え、二人は結ばれることはない。ドーミエの版画では、お得意の皮肉におかしみと悲しさが全開になっているが、たとえば画面奥の洞くつからエコーの叫びを、手前のふちに水仙の芽生えを見るのは、少々ロマンチシズムが過ぎるであろうか。
(県立美術館学芸員・生田ゆき)

[作家名(フランス語)]
Honoré DAUMIER
展覧会歴 プリント・ワンダーランド 親と子でみる版と版画(平塚市美術館 1995)
迷路-迷宮としての人生 親子で楽しむアートの世界 (名古屋市美術館 2014)
文献