資料詳細

善きサマリア人

項目 内容
コレクション
ジャンル 版画
作者名 ブレスダン、ロドルフBRESDIN, Rodolphe
制作年 1861年
材料 リトグラフ・紙
寸法 56.4×44.4
署名 左下:Rodolphe Bresdin 1861(左右反転) 画面中駱駝の臀部にモノグラム RB 余白下中央部:Imp. Lemercier Paris
寄贈者
来歴
初出展覧会
作品名欧文 The Good Samaritan
サイト
解説 主題はルカ伝(第10章30-35節)から取られている。ある人が問う。「己のごとく汝の隣を愛すべし」とあるが、「汝の隣」とは誰か。イエスは答える。エルサレムよりイェリコに下る旅人が強盗に身ぐるみはがれ半死半生の傷を負った。祭司や神に奉ずるレビ人にも見捨てられた彼を介抱したのは、反目し合うサマリア人であった。
この逸話において絵画化されるのは圧倒的に救済の場面である。過去の歴史の呪縛を博愛の精神によって超克するクライマックスを歌い上げてきた。その例を求めるなら、バッサーノやドラクロワ、果てはゴッホにまで辿り着くだろう。
もちろん、我らがブレスダンもこの系譜を知らぬ分けがない。しかし、彼は中心モティーフを暗鬱な森に封鎖し、不気味に目を光らせる動物達を散りばめた。痺れるような細密描写の魅力に誘引され、うっかりすると私たちのまなざしは出口を見つけられない。しかし、しばしその誘惑に耐えていただきたい。空虚な中心には、東方風の衣装の男とうち捨てられた半裸の男とが、今まさに視線を通わせんとする瞬間が生起しているのだから。(生田ゆき)(三重県立美術館所蔵作品選集(2003)より) 

 鬱蒼とした森に光が射し、荷を積んだ一頭のラクダを照らし出す。ラクダの足元に描かれるのは、身ぐるみ剥がれ横たわる男と、彼をのぞき込むもう一人の男。周囲には植物が過剰なまでに繁茂し、茂みから生き物が顔をのぞかせている。
 1861年、本作は「キリスト教徒を救うアブド・アルカーディル」と題されサロンに出品された。アブド・アルカーディルは、かつて抗仏運動を展開したアラブの指導者。1860年のシリア内戦時にキリスト教徒を保護した一件はフランスで大きく報道され、彼は一躍時の人となる。タイトルこそ同時代的だが、本作は発表当時から隣人愛を説くキリスト教の主題、すなわち「善きサマリア人のたとえ」を描いた作品として受容された。
 作者ブレスダンはフランスに生まれ、独学で版画を習得。作品の幻想性に加え、その自由奔放な生きざまが多くの文学者を魅了した。本作は、画家の代表作にして最大級のサイズを誇るリトグラフ。細緻でエキゾチックな動植物の描写には、同時代書籍の挿絵等が参照されている。
(鈴村麻里子 『三重県立美術館 コレクション選』 2022年)

[作品名(フランス語)]
Le bon samaritain
展覧会歴 美術を楽しむ散歩道―三重県立美術館名品展Ⅱ ヨーロッパ版画の散歩道(川越市美術館 2003)
文献 van Gelder, D., Rodolphe Bresdin vol.2 Catalogue raisonné de l'Oeuvre Gravé, Paris, 1976, no.100