磯部町の恵利原(えりはら)には、天(あま)の岩戸(いわと)と呼(よ)ばれとる場所があって、岩穴(いわあな)から今もきれいな岩清水が湧(わ)き出とる。この岩清水は、名水百選にも選ばれとって、天の岩戸は、恵利原の水穴とも呼ばれとるんや。
ある年のこと、この天の岩戸の前を広くしようと、土取りをしていたときやった。
土取りをしたところから、大きな手のような形をした石が出てきた。
それを見て、爺(じい)さんが、
「おい、若(わか)い衆(しゅう)。これ、この石にはこんないわれがあるんや」と話しだした。
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「むかしむかし、大昔(おおむかし)のことや。天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に岩戸隠(いわとがく)れをしたときに、世の中が真っ暗になってしもたんや。八百万(やおよろず)の神々が集まって、どうしたらよいか途方(とほう)にくれていたとき、思兼神(おもいかねのかみ)という賢(かしこ)い神の知恵(ちえ)で良い案が出て、岩戸の前でヤンヤヤンヤとさわいだり、踊(おど)ったりしたんやて。
あんまり楽しそうにしておるもんで、何事がおこったんかと、天の岩戸を少し開けて、大神(おおみかみ)がのぞいたんや。そこを、手力男命(たぢからおのみこと)が岩戸に手を掛(か)けて押(お)し開いて、大神を出したもんで、また世の中は明るくなったんや。この神さんは大力の神さんで、その手形がこの石や」
と言うたんや。
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八百万の神
ありとあらゆる神のこと。
思兼神
記紀神話に登場する思慮(しりょ)の神。天の岩戸に隠れた天照大神(あまてらすおおみかみ)をなぐさめ誘い出す方法を考えた。
手力男命
記紀神話に登場する神で、天照大神が岩戸に隠れた時、戸を開いた大力の神。 |
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それをきいたみなは、岩を囲(かこ)んで
「やあ、これは大きい手やなあ」
「いやいや、そうは見えんぞ」
「いやいや、ここは親指に見えるぞ」
「大きい神様やったんやろなあ」
「岩にあとが残るとは、えらい力や」
と口々に言いおうた。
青年たちががやがやさわいでいる横で、爺さんが言うた。
「この話は、わしの小さいときに、うちの人から言い伝えで聞いとってなあ。この石は、粗末(そまつ)にしたらいかん石やぞ」
それならばということで、石は天の岩戸の滝(たき)の下の所に置かれることになったんや。
「この石がそうでなあ」
今も滝に向かって左の下に、それらしい石がおかれているよ。 |
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天の岩戸
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