むかしむかし、イザナミノミコトが七里御浜(しちりみはま)の大なぎさに出て、魚つりをされとった。 もう昼近くになったのに、ワカナの子一匹(いっぴき)もつれんでな。 (つまらんなあ) そう思いながら、ミコトがじーっとつり糸をながめとると、何か青あおとしたものが波にゆられながら流れてきよった。 なにげのう、さおの先でひろいあげてみるとな、それはハマユウの葉で大事そうに、いくえにもていねいに包みこんであった。 (何じゃろう) そう思ってハマユウの葉を一枚一枚広げて開けると、中には黄金色のつぶつぶの実がたくさんついた、見たこともないめずらしい草の穂が入っとったんじゃ。 「何という草じゃろう」 と、興味をもったミコトが、バラバラと手のひらにその実を落としてみると、一つぶ一つぶが陽の光にかがやいて、はちきれそうによう実っとった。 「これは、きっと食べられるものにちがいない」 ミコトはさっそく三つぶ四つぶ口に入れてかんでみたんやて。 すると、どうじゃろう。小さいときに母神にだかれて飲んだ乳のような甘い味がする。 あまりのおいしさに、また三つぶ四つぶとつまんでいるうちに、いつのまにかお腹(なか)がいっぱいになって、急にからだじゅうに元気がみなぎるような気がしたんじゃ。