あんなあ、昔のことやけど、一色のお百姓(ひゃくしょう)さんが、田んぼの仕事に行ってな、一休みしとったら、ひょっこり鹿(しか)が山から下りてきたんやて。 のっそりと畑の横を歩いてな、そうっと川へ入っていった。そしてな、川の真ん中にじーっと立っとんのやわ。 お百姓さんは何をしとんのかなあと思っとった、そうしたらな、次の日もきて、おんなじように川の中につかっとる。 「おかしな鹿やなあ。この寒いのに川遊びかいなあ」 お百姓さんは、首をひねっとった。