トップページ > みえの文化びと > みえの文化びと詳細

みえの文化びと詳細

地域 北勢地域
名前 林 克次

林さまと作品
作品を前にする林克次さん

プロフィール  林克次さんは、昭和18年、四日市市に、陶芸家・初代林紫光氏の二男として生誕しました。昭和42年 漆芸家・辻光典氏に師事して創作活動を開始し、陶芸家として長年にわたり優れた業績を重ねています。
 自宅の工房で陶芸教室を開き、人材の育成、後継者の発掘に努める一方で、社会福祉施設において陶芸を教え、高齢者や体に障がいのある人などの生きがいを高め、社会復帰と自立の促進に貢献する活動を積極的に行っています。
 平成6年に第9回国民文化祭三重県実行委員会に企画委員として参加し、また三重県陶芸作家協会(現:三重県陶芸協会)の設立に参画するなど、陶芸文化振興にも努めています。
 陶芸以外でも、平成11年から、毎年5月にいなべ市藤原町で「炎のイベント・窯炎と薪能」を開催するなど、文化発信による地域おこしに貢献しています。 

(主な受賞歴)
昭和47年 「朝日陶芸展」特別賞
       「光風会展」光風工芸賞
昭和58年 三重県文化奨励賞
令和元年 三重県文化大賞
令和3年 地域文化文化功労者表彰(文部科学省)


記事  林克次さんは、タタラと呼ばれる薄い陶土を、広げ、折り曲げ、形づくり、陶芸作品に仕上げる技法の第一人者です。その技は「タタラマジック」と称されます。「手仕事であることは見せるが、手の跡はつけない」という考えのもと、薄く広い板状の陶器のなめらかな表面が自然に波打つ、独特のフォルムを作り上げます。
 「薄い土を、それが乾くまでの間に成型するのは時間との戦い」と林さんは言います。林作品には、焼き物として非常に大きなものや、とても複雑な形のものもあります。その「時間との戦い」を乗り越えることは、他の誰にも真似することができない凄まじい技です。

 四日市に生まれた林さんのお父様・初代林紫光氏は、四日市萬古焼の重鎮で、オーソドックスな作陶を得意とする方でした。それに対して、林克次さんが惹かれたのは、同じ四日市萬古焼でも、より装飾性の強い「型萬古」という技術でした。木の型に薄い土の板(タタラ)を貼り付ける独特の技術です。
 しかし、その独特の「手わざ」は、「用すなわち美」という実用的な美が評価される流れの中で、なかなか価値が認められません。林さんはそれを惜しいと思い、20代から50年近く、その「手わざ」の発展と普及を目指して、その技法を作陶の中心に据え続けています。

 また、林さんは、社会福祉施設での陶芸教室を、何十年も前から続けています。高齢や障がいのため、土を手でギュッと握ることがやっとという人が作ったものを、そのままの形で焼き入れします。土の感触によるリハビリ効果を期待する面もありますが、それ以上に、出来上がった物を一つの作品として考えています。それらをまとめ一つのオブジェにして、作品として美術館で展示したこともあります。
 その人が持っている力や感覚を使って、誰のものでもないその人独特の物を作るなら、それは個性であると、林さんは言います。実際、その人たちが作った物に、一つとして同じ形はありません。

 そして、林さんは、後進の陶芸家の育成にも力を入れています。地場産業としての四日市萬古焼の伝統は職人の世界でしたが、それを芸術にすることを目指しています。その思いで、三重県陶芸作家協会(現:三重県陶芸協会)の立ち上げに関わりました。
 重厚な伊賀焼から、四日市万古焼の装飾的な『手わざ』まで、両極端なものが揃っている三重県の陶芸は、芸術として発展させる価値があるものだと考えています。

 さらに、林さんは、陶芸以外の活動として、いなべ市にある藤原薬師山の紫光窯で、毎年、「窯炎(ようえん)と薪能(たきぎのう)」というイベントを開いています。
 「薪能」とは、野外で薪の火の明かりをたよりに能を鑑賞することをいいます。このイベントでは、その明かりとして、登り窯の薪の火を使って舞台を照らします。窯の炎をアートとして表現しようという試みです。
 喜多流能楽師・長田驍(おさだたけし)さん(平成13年国重要無形文化財能楽総合指定認定者、平成15年三重県民功労賞受賞者、中勢地域「みえの文化びと」)に協力をしてもらい、大体年に一度のペースでイベントを続けています。令和元年には22回目を数えました。

 今、林さんは、四日市萬古の「手わざ」が埋もれないよう、体系的に保存する仕事に取り組みたいと考えています。今年、三重県文化大賞に選ばれ、林さんの作陶が改めて高く評価されました。そのことは、林さんに、自身の作陶の原点への思いを強くさせるきっかけとなりました。


同床異夢
作品名「同床異夢」
しりあい
作品名「しりあい」
問い合わせ先 〒510-8037 三重県四日市市垂坂町74-3
TEL・FAX 059-332-1811
携帯 090-8954-6368
e-mail  
ホームページ  
取材機関 三重県環境生活部
文化振興課
〒514−8570
三重県津市広明町13番地
TEL 059−224−2176
FAX 059−224−2408
登録日 令和01年7月10日

戻る

ページのトップへ戻る