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みえの文化びと詳細

地域 北勢地域
名前 佐藤 慎也(さとう しんや)

2016年12月 小山田美術館 個展にて
2016年12月 小山田美術館 個展にて

プロフィール  中度の知的障がいを抱えながら作画に励み、先生に師事することはなく、独学で点と線を駆使し、四日市の街や駅の風景などを、アクリル絵の具で細密に描いています。2010年に初めての個展を小山田美術館で開催し、その後毎年、小山田美術館で個展を開催しています。また、2016年11月に名古屋三越栄店美術画廊で開催された「第30回NHK厚生文化チャリティー展」などにも出展し注目されています。
記事  佐藤慎也さん(41歳)は、中度の知的障がいを抱えながら作画に取り組んでいます。近年は、点と線を駆使して細密に描かれ、看板や石、細かなところまで見落とさず描写した精巧な作品を制作しています。2016年12月には、四日市市山田町の小山田美術館での6回目の個展「佐藤慎也絵画展」を開催したほか、名古屋三越栄店美術画廊で開催された「第30回NHK厚生文化チャリティー展」などにも出展し、称賛を浴びました。

―「絵を描く」ことが心の糧となり、周りの人が寄り添い才能を育む―
 慎也さんは、幼少のころから、電車や車などを中心に絵を描くことが好きでした。幼少の頃は、クレヨンやサインペンで描き、20歳頃から、絵の具を使い始めました。コミュニケーションがうまくとれないこともあり、先生に師事することはなく、独学で自分の好きな絵を描いてきました。2010年に初めて小山田美術館で個展を開く機会に恵まれ、慎也さんの絵を、多くの人に見ていただくきっかけとなりました。その時に、多くの方に絵を褒めていただき、絵に対する想いが一層強くなったといいます。現在、両親と一緒に暮らし、四日市市内の温泉施設に勤め、休日や仕事を終えてから絵を描くことが、心の糧となっています。そんな慎也さんに周りの人が寄り添い、慎也さんの才能を育んできました。

―細密な作品への道のり―
 慎也さんは、まずスケッチブックに全体の構図を鉛筆でほぼ一本描きします。次に、何度か描いた場所に足を運び、塀や、看板など細かいパーツを別描きし、色についてもメモを取っていきます。その後、自宅で全体の絵に、別に描いてきたパーツ部分を見て、細筆1本で着色し、少しずつ仕上げます。記憶力と観察力、消しゴムをほとんど使わずに構図を描くバランス感覚、そして繊細な筆使いと表現力は素晴らしいと思いました。瓦の枚数や、ブロック塀など実物と数が同じというのも驚きです。
 しかし、現地へ出向いた時間により光の当たり具合が違い、影の位置が変わります。それを1枚のつながった絵として表現することは、目で見た風景をそのまま表現する事とは異なるため、慎也さんが理解に苦しむこともあったと、父の稔さんは話します。
 また、初めての個展までは、色を混ぜるという概念がなく、28色の絵の具をそのまま使い着色したため、平面的な仕上がりの絵が多かったのですが、稔さんが、混色を教えて、微妙な色使いができるようになりました。現在は、8色ぐらいのアクリル絵の具を混色して描いています。「混色技術を理解するのに半年はかかった。」と稔さんは当時の慎也さんの苦労を振り返りますが、一旦理解できると、更に混色を独自で研究し、作品は奥行きを増し、細密に表現されるようになったといいます。
 2014年12月に描き始めた作品「しまかぜ」は、題材が大好きな電車とあって気持ちが入ったとのことです。この頃から、ガラスに映りこむ風景も描き始め、更に細密な表現となり、4カ月ほどかけて仕上げました。次の作品は、稔さんの勧めで電車や車以外の建物の風景である、四日市市の「百五銀行四日市支店」を描き、慎也さん自身も現在一番気に入っている作品だそうです。一番難しかった点はという問いに、「桜です。」と答えてくれたように、ひと花ひと花丁寧に描かれています。

―さらなる飛躍を目指して―
 稔さんは、「気持ちが塞ぐと絵の色も暗くなりがちだったが、個展を開くこの数年は絵の色が明るい。」と話し、人とコミュニケーションをとるのが苦手な慎也さんでしたが、性格も明るくなってきたといいます。
 これから、慎也さんの絵が市外、県外、いろいろな人に見てもらえる機会があればうれしいと、稔さんは話し、それが現実となれば、更に励みとなって作画に励む慎也さんの姿が目に浮かびました。「一度説明して理解する事は難しい。」と稔さんが話すように、新しい挑戦には、初め時間がかかると思いますが、理解した後の集中力や、表現力は目を見張るものがあり、今後の飛躍をとても楽しみに感じました。
2015年4月完成「しまかぜ」
2015年4月完成「しまかぜ」
2015年9月完成「百五銀行四日市支店」
2015年9月完成「百五銀行四日市支店」
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取材機関 四日市地域防災総合事務所
地域調整防災室
TEL:059-352-0761
Mail:ychiiki@pref.mie.jp
登録日 平成29年1月18日

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