みえの文化団体詳細
項目 | 内容 |
---|---|
地域 | 北勢地域 |
団体名 | 東海道関宿まちなみ保存会 |
プロフィール | 「東海道関宿まちなみ保存会」は、昭和55年に発足しました。同会が保存に尽力する「関宿」は、今なお東海道47番目の宿場の町並みが良好に残る、日本でも稀有な存在です。地域住民によって結成された同会は、その景観や文化を後世に誇りを持って守り伝えるとともに、その町並みを積極的に活用することによって、個性豊かで文化の薫り高い町づくりに多大な寄与をしています。 同会は、発足以来、関宿における伝統的建造物群の保存と文化の継承活動として、月例学習会「夜会(よるかい)」の開催、毎年開催される「東海道関宿街道まつり」への協力、広報ツールとしての「関宿かるた」の普及振興活動など、多くの自主的活動を多年にわたり継続してきました。それらの取組は、三重県が全国に誇る「関宿」の歴史的景観とともに、全国的に高い評価を得ています。 同会の活動は、関宿の町並みを単に保存することにとどまらず、毎日の生活の場でもある同地域を、その歴史文化や生活環境を包括して保全し、生活者にとって「終の棲家」となる場所を、誇りと潤いのある生活空間へ形成していくことにも及びます。 さらに、最近の動きとして、令和6年に関宿が「亀山トリエンナーレ」の会場となったことが挙げられます。3年に1度の現代アートの祭典(同実行委員会が第22回三重県文化賞で文化奨励賞を受賞)で、例えば、第21回三重県文化賞で文化新人賞を受賞した動物造形作家の山田風雅さんは、江戸時代の町並みの中に、古代に生きたトリケラトプスの立体造形を展示し、時代を超えた演出を手がけました。同会の尽力で保存される景観が、新たな可能性を生み出しています。 同会のこうした活動や功績は極めて優れたものであり、本県の文化の向上に大きく貢献するものとして、平成17年度の「第5回三重県文化賞」で「文化功労賞」を受賞し、令和6年には、文部科学大臣により地域文化功労者として表彰されました。 昭和55年(1980) 旧関町 伝統的建造物群保存地区保存条例 制定 同年 関町まちなみ保存会設立 昭和57年(1982) 関町伝統的建造物群保存地区の都市計画決定 同年 文化財保護法に基づく保存地区の選定申請 昭和59年(1984) 全国で20番目、三重県で唯一の重要伝統的建造物群保存地に選定 昭和60年(1985) 関町の保存修理修景事業開始 昭和63年(1988) 保存地区中心部(約900m)無電柱化 同年 関まちなみ資料館 開館 平成 9年(1997) 関宿旅籠玉屋歴史資料館 開館 平成10年(1998) 関宿まちなみ保存会に名称変更 平成11年(1999) 木崎地区無電柱化 平成12年(2000) 新所地区無電柱化 平成17年(2005) 関町が亀山市に合併 同年 第5回三重県文化賞 文化功労賞 令和 5年(2023) 東海道関宿まちなみ保存会に名称変更 令和 6年(2024) 関宿重伝建選定40周年記念事業 同年 亀山トリエンナーレ2024の会場に関宿を追加 同年 文部科学大臣による地域文化功労者表彰受彰 |
記事 | 「関宿」は江戸時代に東海道の宿場町として栄えた場所です。江戸時代の街道沿いの宿場町では、参勤交代の大名などが宿泊する本陣・脇本陣や、一般の旅人が宿泊する旅籠が建てられ、荷物や書状を人馬で運送する仕組みが整備されました。そのうち「関宿」は、東海道の、江戸・日本橋を起点として京・大阪を結ぶ47番目の宿場町でした。 地名の由来は、古代の重要な軍事拠点だった「鈴鹿関」です。古代から交通の要衝だった関が江戸時代に宿場町として整備されると、東の追分(街道の交差点)で伊勢別街道を分岐し、西の追分で大和街道と分かれるという立地条件もあり、明治の初期まで関は多くの旅人によって大変な賑わいを見せました。 明治中期以降に鉄道網が整備され、宿場町の機能が次第に失われていった後も、関の町並みは残りました。現在でも、地区内の建造物のうち、江戸・明治のものが約半数を占め、 昭和戦前までのものを含めると伝統的要素をもつ木造建築が7割に達します。昭和後期、他に類の少ない町並みを保存する機運が高まり、昭和55年に旧関町が「伝統的建造物群保存地区保存条例」を制定すると同時に、地域住民による「関町まちなみ保存会」が設立され、行政と市民が両輪となって、江戸時代の雰囲気を色濃く残す町並みの保存活動が始まりました。その活動により、昭和59年に全国で20番目、三重県及び東海道の宿場町で唯一の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。 昭和時代には、伝統的な建造物と現代的な生活様式が今よりも併存する町並みだったそうです。電柱と電線が街道を走り、カラフルな看板などもありましたが、昭和60年に始まる旧関町の保存修理修景事業で、町並みの風景が少しずつ整えられていきました。電柱を街道の周辺に移設し無電柱化するとともに、建物の補修を伝統的家屋の形で行っています。保存会もその事業に全面的に協力し、地域住民との調整などを行いました。 かつての景観を色濃く残していた町並みは、自治体と協働した保存会の活動により、現在では、まるでタイムスリップをしたかと錯覚するほど、江戸時代の宿場町の雰囲気を保っています。 町並みの保存に多大な成果を挙げた保存会ですが、理事長の増亦肇さんは、悩みもあると明かします。保存される古い町並みは、現代の生活習慣と必ずしも一致しない部分があるため、不便さを感じ住民が転出してしまう課題があるそうです。 保存会は、令和6年「重伝建選定40周年」の記念事業で、市が開催した小学生を対象としたワークショップに参加し、子どもたちに関宿の歴史を学んでもらいました。また、保存会では、会員である地域の画家が絵を制作し、関の名所の絵札に、その説明を読み札とする「関宿かるた」を普及グッズとして作成しています。同年の記念事業で、子ども部門と中学生以上の大人部門とに分け、「関宿かるた大会」を開催しました。かるたを通じて、関の歴史や文化の普及に努めています。さらに、保存会では、活動拠点である関宿内の旧落合家住宅で、例えば「関宿の町並みをどうするか」といった様々なテーマで講師を招き、「夜会」と名付けた勉強会を定期的に開催して、市民誰もが参加できるようにしています。 これらのイベントには、子どもたちを含む地域の人たちに、関宿でいかに貴重な歴史が積み重ねられてきたかを知ってもらうことが、町並みの保存の意義を理解してもらうことに繋がるとともに、シビックプライド(その地域に住むことへの誇り)が醸成されることで、将来にわたって町並みを守るきっかけにしたいという切実な思いがあります。 さらに、文化財を保存するだけでなく、積極的に活用していくことを目指す昨今の方向性も、増亦理事長と保存会の皆さんは強く意識しています。40年にわたって関宿の町並みを保存し、価値を高めてきた保存会は、未来を見据えて、現状に満足せず、地域の様々な課題を見つけて、その解決や発展を目指しています。 文部科学大臣による地域文化功労者表彰について、増亦理事長はこう話します。「三重県文化賞で文化功労賞を受賞したときと同じく、今、活動をしている我々が実際に表彰状を受け取りましたが、表彰されたのは我々ではなく、この町並みを歴史的に守ってきた地域の人たちや、その町並みを40年前から守ってきた保存会の先人たちの働きがあっての表彰だと考えています。我々も、この先の人たちにバトンを渡すべく、関宿を守り発展させていきたいと思っています。」 |
問い合わせ先 | 亀山市文化課 まちなみ文化財グループ TEL:0595-96-1218 FAX:0595-96-2414 |
bunkazai@city.kameyama.mie.jp | |
ホームページ | 亀山市まちなみ文化財グループ |
取材機関 | 三重県 環境生活部 文化振興課 津市広明町13 TEL:059-224-2176 FAX:059-224-2408 |
登録日 | 2025/04/09 |