資料詳細

寺田の石造地蔵菩薩坐像群

項目 内容
文化財名 寺田の石造地蔵菩薩坐像群
附名 てらだのせきぞうじぞうぼさつざぞうぐん
指定区分
指定種別(詳細種別) 有形文化財/彫刻
指定・登録日 2017/02/02
市町 伊賀市
所在地 伊賀市寺田字坂之東944番地、同市寺田字前坂1307番地、同市寺田字桐之木谷1535番地
所有者 宗教法人清正寺、宗教法人大光寺
員数 3基
構造
年代 鎌倉時代(後期)~室町時代(前期)
サイト
概要  伊賀市寺田の大光寺のある丘陵および周辺に所在する。3基の石造地蔵菩薩坐像は、いずれも隅切り形の龕(がん)を彫り窪めた中に地蔵菩薩坐像を半肉彫で表現する。また、蓮華座は蓮台(れんだい)・敷茄子(しきなす)・反花(かえりばな)・框(かまち)の4重で構成されており、小型の宝珠(ほうじゅ)を持つことや、光背(こうはい)の形状が似るなど、3基とも共通の様式で作成されていたことが窺える。
 字坂之東所在1基は、大光寺のある丘陵西側、寺田字坂之東に所在する地蔵堂に安置される。表面や四周を整形したほぼ正方形の岩に、上部二隅の隅切りを行った縦長の龕を彫り込み、龕内部に頭光および身光を有し、4重の台座に坐す地蔵菩薩を半肉彫で表現する。框座(かまちざ)は三面が表現され、各面に内部を面落としした長方形の区画を彫り出す。反花は複弁で緩い角度で広がり、敷茄子は木瓜状透かし表現がある。蓮台の蓮弁は、輪郭を持った単弁で浅い角度で広がりを見せる。左手の宝珠は小さく、右手の錫杖は左右3つずつの遊環(ゆうかん)を持ち、錫杖頭(しゃくじょうがしら)に五輪塔を配する。三道(さんどう)・髪際(はっさい)の表現はなく、光背は二重光背で身光は肩の張った壺形で無文。頭光は八葉の単弁蓮華文で、弁央線が先端から弁中央部まで彫り込まれる。
 字前坂所在1基は、大光寺参道の中腹に所在する花崗岩の自然石に3体の地蔵菩薩坐像が彫刻されてたもので、「北向三体地蔵」や「岡山の石仏」とも呼ばれる。四隅の隅切りを行った横長の龕を彫り込み、内部に並列三体の地蔵坐像を半肉彫で表現する。地蔵菩薩は、三体ともほぼ同規格で造られており、頭光および身光を有し、蓮台・敷茄子・反花・框からなる蓮華座に坐す。框座は三面が表現され、長方形の区画を正面に2つ、両脇に1つずつ彫り出し、輪郭内は面を落とす。反花は複弁、子葉は輪郭をとり、敷茄子は木瓜状透かし表現がある。蓮台は輪郭をとる単弁の魚鱗葺きで表現する。左手の宝珠は小さく、右手の錫杖は左右3つずつの遊環を持ち、錫杖頭に五輪塔を配する。光背は二重光背で、身光は肩の張った壺形で無文。頭光は八葉の単弁蓮華文で、弁央線を先端から弁中央部まで彫り込まれる。
 字桐ノ木谷所在1基は、大光寺本堂の南西に所在し、「桐之木谷地蔵坐像磨崖仏」とも呼ばれる。斜面に埋もれた大きな岩に、上部二隅の隅切りを行った縦長の龕を彫り込み、龕内部に頭光・身光を有し、4重の台座に坐す地蔵菩薩を半肉彫で表現する。框座は3面を表現するが、稜は明瞭ではなく、正面に2区、両脇に1区の長方形の区画を表す。反花は複弁で間弁は先端のみの表現となり、敷茄子は無文。錫杖の遊環は左右2つずつで、錫杖頭内部は無文である。また、光背の身光は上部で強い屈曲を見せる壺形で、頭光に蓮肉の表現や蓮弁の装飾が無くなる。このように、当像は他の2基に比べ、表現に新しい要素が見られる。
 字坂之東所在1基および前坂所在1基は、津市・宝樹寺の石造地蔵菩薩坐像(正和3・1314年銘、県指定有形文化財)と蓮弁の表現や錫杖の五輪塔等に共通性が見られる。ともに14世紀前半に彫刻されたものと考えられる。字桐之木谷所在1基は、全体的な表現が簡略化されており、14世紀後半から15世紀初頭に位置付けられる。
 本格的な蓮華座に坐す地蔵菩薩が、近畿地方一帯でも少ない中で、寺田地区に集中することは、石工が地域に定着し、石仏の製作技術や形態が世代を超えて継承されていたことにも価値を見いだすことができる。
 3基の石造地蔵菩薩坐像は、いずれも立体的かつ丁寧な表現が見られ、14世紀代の特徴をよく表した優品であるとともに、技術や信仰の伝播および定着という歴史的展開を窺うことができる資料群である。美術的・学術的にも高い価値を持つ重要な資料である。