『花の一句』入賞作品集
三重県
〈俳聖 松尾芭蕉〉のふるさと三重県は、「海の一句」「旅の一句」に 続く第三弾として、「花の一句」の全国募集を行いました。
今回は「花」をテーマとした〔テーマ部門〕と〔雑詠部門〕に 合わせて二一五、六四一句のご応募をいただきました。
これらの作品は、選者の黛まどかさん(テーマ部門)、三重県俳句協会(雑詠部門)の皆さんにより 厳正に選考され、このたび最優秀賞・優秀賞をはじめとする入選作品が決定いたしました。
最優秀賞
【テーマ部門】
【雑詠部門】
優秀賞
【テーマ部門】
薔薇の門出でて働く人となる |
甲斐 のぞみ |
(山口) |
乳を吸ふ足遊ばせて花筵 |
中村 春草 |
(愛知) |
父母に遠く暮らすや葛の雨 |
白石 はい |
(大阪) |
【雑詠部門】
冬帽子きのうは畑に居たという |
中阪 賢秀 |
(滋賀) |
奨励賞(テーマ部門)
【幼児 -最優秀賞-】
じてんしゃのけいこあさがおわらってる |
伊藤 彩 |
(三重) |
【幼児 -優秀賞-】
ひまわりはあしたもきっといいえがお |
朝熊 希成 |
(三重) |
にわにさくきくをならべておままごと |
岡本 麻里 |
(三重) |
ひがんばなくるんくるんとげんきだね |
平岩 いずみ |
(愛知) |
【小学生 -最優秀賞-】
ブランコを大きくこげば赤つつじ |
藤原 真純 |
(千葉) |
【小学生 -優秀賞-】
赤いばらないしょの話をしてしまう |
熊谷 直紀 |
(岐阜) |
ひまわりがどこまでもありかくれんぼ |
大が まなみ |
(岐阜) |
ひまわりや交かん日記見られたる |
野田 じゅん |
(京都) |
【中学生 -最優秀賞-】
【中学生 -優秀賞-】
いもの花土から来しもの土へちる |
大崎 聖之 |
(三重) |
ほろほろと宝が散るよ金木犀 |
近藤 伊久魅 |
(愛知) |
たんぽぽのはるつよくてやさしいはる |
山岸 まい |
(岐阜) |
【高校生 -最優秀賞-】
【高校生 -優秀賞-】
梅咲くや裏山に日の動きたり |
池村 朱子 |
(三重) |
道端のつもる話や草の花 |
菊池 和美 |
(埼玉) |
母の日の花買ひ足してもどりけり |
小山 裕子 |
(三重) |
奨励賞(雑詠部門)
【幼児・小学生 -最優秀賞-】
ぼくたちのかおより大きいかぼちゃだね |
いとう まさと |
(三重) |
【幼児・小学生 -優秀賞-】
あまがえるあしをのばしてゆめみてる |
山崎 珠里 |
(三重) |
きたかぜはぼくよりあしがはやいんだ |
伊藤 隆 |
(三重) |
木のみきにくろくかがやくかぶと虫 |
杉浦 文郁 |
(愛知) |
【中学生 -最優秀賞-】
【中学生 -優秀賞-】
【高校生 -最優秀賞-】
【高校生 -優秀賞-】
踊りの輪まだ輪にならず回りゆく |
増田 早由里 |
(三重) |
黛まどか賞
〔テーマ部門〕 |
逢ひに行き逢はずに帰る花の冷え |
末光 栄子 |
(愛媛) |
三重県俳句協会賞
〔雑詠部門〕 |
秋耕の野を吹く父の風ならむ |
田中 彦一 |
(静岡) |
季節の花賞
〔テーマ部門〕 |
花菖蒲働らく髪を小さく結ふ |
大野 まさみ |
(埼玉) |
〔雑詠部門〕 |
葛に葛絡む機殿閉ざすまま |
浜地 和恵 |
(三重) |
ジャパンフラワーフェスティバルみえ賞
〔テーマ部門〕 |
コスモスのきらいで始まる恋うらない |
黒川 絵美 |
(三重) |
津市賞
〔テーマ部門〕 |
朱の橋をゆるりとくぐる花筏 |
佐野 信子 |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
浮樽の箍あたらしき春の海女 |
庄司 風樹 |
(千葉) |
四日市市賞
〔テーマ部門〕 |
稲の花風のはざまに母の声 |
原口 季代 |
(千葉) |
〔雑詠部門〕 |
雲雀野に大学一つ駅一つ |
髙橋 泰子 |
(大阪) |
伊勢市賞
〔テーマ部門〕 |
川上の花の仔細は流れにも |
水野 久美子 |
(愛知) |
〔雑詠部門〕 |
初鴉あめつち分くる辺りかな |
荻原 枯石 |
(栃木) |
松阪市賞
〔テーマ部門〕 |
手に触れし藤の匂ひを持ち帰る |
加藤 和子 |
(愛知) |
〔雑詠部門〕 |
送り火を消し暫くは門に佇つ |
中根 喜美江 |
(岐阜) |
上野市賞
〔テーマ部門〕 |
花人に孔雀は羽をひろげけり |
清水 あつ子 |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
葱の土土間にこぼるる余寒かな |
平川 光子 |
(三重) |
尾鷲市賞
〔テーマ部門〕 |
菜の花や歌流しゆく村のバス |
髙井 敏 |
(岐阜) |
〔雑詠部門〕 |
一灯は出てゆく船か冬怒濤 |
小林 チカ子 |
(三重) |
熊野市賞
〔テーマ部門〕 |
裏口に馴じみのこえや桃の花 |
谷 弥住子 |
(静岡) |
〔雑詠部門〕 |
山が山おしだす岬むかご飯 |
海野 博 |
(宮崎) |
一志町賞
〔テーマ部門〕 |
コスモスや身丈揃わぬ登校児 |
森 二三子 |
(京都) |
〔雑詠部門〕 |
曲り家の屋根の草吹く秋の風 |
植山 哲舟 |
(三重) |
白山町賞
〔テーマ部門〕 |
梅の花ついばみ鳥の長居せず |
中川 徳子 |
(神奈川) |
〔雑詠部門〕 |
自然薯のあと一息を指で掘る |
東海 憲治 |
(三重) |
美杉村賞
〔テーマ部門〕 |
石楠花の風のかたちに開きをり |
倉橋 みどり |
(奈良) |
〔雑詠部門〕 |
山門をぬけて芙蓉に至る風 |
山本 田鶴 |
(三重) |
三雲町賞
〔テーマ部門〕 |
沈丁の香の濃く淡くあねいもと |
堀内 禮子 |
(広島) |
〔雑詠部門〕 |
青田にも祭り提灯点りをり |
飯田 なな |
(滋賀) |
玉城町賞
〔テーマ部門〕 |
花冷えや佛のながき薬指 |
徳井 あつみ |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
石鎚へ穂先そろへし麦を刈る |
飯尾 淳子 |
(茨城) |
小俣町賞
〔テーマ部門〕 |
鯉飛んで組直さるる花筏 |
小杉 正 |
(愛知) |
〔雑詠部門〕 |
まつすぐにひと畝だけの鍬始 |
岩﨑 興治 |
(埼玉) |
大王町賞
〔テーマ部門〕 |
菜の花の海へとつづく海女のみち |
河野 ひさ江 |
(千葉) |
〔雑詠部門〕 |
舟底を天へ向け置く冬仕度 |
阿久津 凍河 |
(青森) |
伊賀町賞
〔テーマ部門〕 |
犬ふぐり田神の座る太畦に |
逵 博子 |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
狗尾草城址に一つ隠し井戸 |
赤塚 いく子 |
(岐阜) |
紀伊長島町賞
〔テーマ部門〕 |
菜の花や村中の戸があけてある |
小鹿 静子 |
(愛知) |
〔雑詠部門〕 |
岬寺に佛頭一つ雁渡し |
西川 おむゐ |
(三重) |
紀宝町賞
〔テーマ部門〕 |
嫁ぐ荷の離島をさして花蜜柑 |
茂谷 孝志 |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
大根干す青空の隅すこし借り |
太田 孝 |
(愛知) |
紀和町賞
〔テーマ部門〕 |
山襞の影の深まる蕎麦の花 |
小林 美代子 |
(神奈川) |
〔雑詠部門〕 |
日の残る方へ方へと冬田打つ |
山川 尞子 |
(三重) |
学習研究社賞
〔テーマ部門〕 |
鳳仙花生きる火種をまき散らす |
郷 佐栄子 |
(愛知) |
|
五つ六つこぼして活ける桃の花 |
大野 あい |
(三重) |
|
桜花まなこ閉じても開いても |
大友 由紀 |
(東京) |
|
杜若その女こそ恋敵 |
土橋 眞弓 |
(和歌山) |
|
朝顔に肩貸している物干し台 |
中村 友美 |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
革手袋はめたる指を握りしむ |
長谷 加代子 |
(三重) |
|
さびしくてみんな祭の中にゐる |
西場 栄光 |
(静岡) |
NHK出版賞
〔テーマ部門〕 |
告白はまっかなばらに花詞 |
沢渡 梢 |
(東京) |
|
カーネーション母を知らずに母となり |
髙橋 靖子 |
(静岡) |
|
葛の咲くこの村こ丶で行き止り |
田中 厳三 |
(三重) |
|
花曇り売れぬ魚の目をそろえ |
田嶋 満 |
(山口) |
|
れんげ草今日旅人の顔で摘む |
太田 扶美代 |
(大阪) |
〔雑詠部門〕 |
鷹柱解けたる終の一羽かな |
木川 夕鳥 |
(静岡) |
|
牛売って火の気の失せし炉に籠る |
渡辺 継男 |
(大阪) |
角川書店賞
〔テーマ部門〕 |
つぎつぎと人の出て来る萩の中 |
井ノ岡 恭次 |
(京都) |
|
雲の影山の影過ぎ蕎麦の花 |
橋本 理恵 |
(三重) |
|
見習いの菊師手荒らに菊剥がす |
本城 香也子 |
(三重) |
|
藤浪や風の言葉を順おくり |
山口 礼子 |
(大阪) |
|
脇役の器用貧乏枇杷の花 |
都築 道久 |
(大阪) |
〔雑詠部門〕 |
トロ箱に噛みつく鱧を糶りにけり |
髙田 菲路 |
(兵庫) |
|
露草に乳房ふれゐて牛歩む |
駒田 弘子 |
(三重) |
北白川書房賞
〔テーマ部門〕 |
朴の花ゆれて杣来る隠し径 |
常田 侑 |
(福井) |
|
菊人形相討つ二人同じ香に |
足立 ふじ子 |
(兵庫) |
|
着せ替へて軽く一礼老菊師 |
佐々井 木邨 |
(愛知) |
|
今生に何をか残し曼珠沙華 |
合川 友恵 |
(神奈川) |
|
花冷の格子の奥に紐組めり |
葉山 恵 |
(京都) |
〔雑詠部門〕 |
鰤起し少年すでに漁夫の声 |
大澤 映城 |
(青森) |
|
ためらひてゐしが踊の輪に入る |
阪脇 文雄 |
(三重) |
光文社賞
〔テーマ部門〕 |
菊の香を菊を離れて思ひけり |
伊藤 義明 |
(京都) |
|
伊勢菊やようよう姿ととのいぬ |
柴山 悦子 |
(神奈川) |
|
れんげ草光こぼさぬやうに摘む |
植村 喜代恵 |
(大阪) |
|
菜の花や内緒の話つつぬけに |
吉田 さかえ |
(三重) |
|
岬より岬の見ゆる石蕗の花 |
木本 たけ子 |
(愛知) |
〔雑詠部門〕 |
白山を戴く村の凍豆腐 |
末﨑 史代 |
(三重) |
|
雛市の雛の視線のなかを過ぐ |
千島 染太郎 |
(岡山) |
女性セブン賞
〔テーマ部門〕 |
いただきは雲を離さず山法師 |
北野 みや子 |
(石川) |
|
言い出せぬままにコスモス揺れてをり |
清家 明日香 |
(大阪) |
|
いぬふぐりてふ名を知つてよりの青 |
中島 ちなみ |
(東京) |
|
自転車のかごに菊あり立ち話 |
小合 久美 |
(京都) |
|
いちにちを素顔で過ごす秋桜 |
疋田 理恵 |
(福岡) |
〔雑詠部門〕 |
貼り替えて障子大きく見えにけり |
和田 矢須子 |
(兵庫) |
|
ひと言にひと言応へ毛糸編む |
栗城 幸子 |
(福島) |
とらばーゆ賞
〔テーマ部門〕 |
柿の木の影の内なる赤のまま |
小桐間 淳子 |
(三重) |
|
翔ものはみな素足なり金木犀 |
野田 あき |
(岐阜) |
|
絵の中のコスモスに風入れにけり |
羽城 裕子 |
(広島) |
|
寄り道は白粉花の咲くところ |
服部 純子 |
(愛知) |
|
花桔梗彼女がゐてもゐなくても |
古川 裕子 |
(愛知) |
〔雑詠部門〕 |
万緑の底に陶焼く一戸かな |
黒宮 妙子 |
(三重) |
|
吹くほどに音色ととのふ瓢の笛 |
井上 礼幾 |
(福岡) |
PHP研究所賞
〔テーマ部門〕 |
花筏よけて絵筆を洗いけり |
岡戸 導子 |
(愛知) |
|
老人が老人を訪う百日紅 |
鈴木 幸子 |
(愛知) |
|
明日も咲く力を鎭め牡丹閉づ |
濱口 秀村 |
(三重) |
|
雑談にでてきた竜胆送られし |
西村 ゆかり |
(愛知) |
|
花人の降りし観光バス洗ふ |
家崎 のぶ子 |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
紙漉女燈を消して水眠らせる |
服部 勝太郎 |
(埼玉) |
|
廃校の人体模型西日なか |
那須 ひろし |
(大阪) |
ビジオ・モノ賞
〔テーマ部門〕 |
花蕎麦の中程からは隣村 |
阿部 愷堂 |
(神奈川) |
|
束ね髪解いてナースの花衣 |
小西 潔美 |
(石川) |
|
蒲公英を踏まず少年ジャンプする |
酒井 敬一郎 |
(大阪) |
|
秋桜みんなやさしくなつてをり |
黒川 良子 |
(埼玉) |
|
人増えも減りもせぬ村桃の花 |
宮武 杏子 |
(三重) |
〔雑詠部門〕 |
鰯雲犬の太郎は老いにけり |
松尾 憲勝 |
(神奈川) |
|
着ぶくれて鏡の前を素通りす |
林 よね |
(愛知) |