奥の細道
山中(石川県山中町)
むざんやな甲の下のきりぎりす
(むざんやなかぶとのしたのきりぎりす)
実盛首実検の場(謡曲『実盛』)における木曾義仲のせりふ、「あな無残やな斎藤別当にて候ひけるぞや」を踏まえて、斎藤別当の顔かと思いきや冷え寂びた顔つきのコウロギだったことにひとしおの哀れさを感じ取った句。
今日よりや書付消さん笠の露
(きょうよりやかきつけけさんかさのつゆ)
笠に書き付けた「同行二人」は、曾良を介添えとして修行の旅を続ける意。その曾良が病を得て修行の旅から離脱するにあたり、これまでの曾良の心遣いに謝意を表するとともに、笠についた朝露で「同行二人」の書付を消し、一人行脚する覚悟を語った句。