藤島武二「裸婦」:X線連動比較画像   作品詳細

4年間にわたるはじめてのヨーロッパ留学が終わると藤島はすでに42歳になっていましたが、その後10年以上も表現方法に苦しみました。そうしたスランプの時期に描かれたこの裸婦像は円熟期に開花した諸作品を想起させる要素が多分に含まれた秀作となっています。エックス線画像では顔の向き、胸の位置、腕の角度など、試行錯誤の跡が写しだされているものの、完成した作品からはそうした苦労が全く表面にあらわれていません。自分は苦労すれど鑑賞者にまで苦労を味わわせたくないという藤島の配慮が見てとれます。